[ Back to EurekAlert! ] 報道解禁日時:米国東部標準時 2005年12月12日(木)午後2時

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Science誌が選ぶ2005年の科学的進歩ベストテン 1位は「Watching Evolution in Action(進化の最前線)」

Science誌は、2005年に成し遂げられた素晴らしい研究ベスト10をここに讃える

1859年、ダーウィンが『種の起源』によって進化論を発表した。以来、進化論は生物学の土台であり基本的学説となっている。しかし、現代の科学者たちが同学説の根本的部分を新たに解明しようとは、ダーウィンは夢にも思わなかったであろう(インフルエンザ遺伝子、チンパンジー遺伝子、トゲウオの鱗板で実際に進化がどのように働いているかなど)。Science誌とその発行元である非営利団体、米国科学振興協会(AAAS)は、進化の最前線を探った研究を2005年の最もめざましい進歩に選んだ。

2005年、科学者達は、遺伝子レベルでの進化および種の誕生に関する新たな発見を積み重ねてきた。これら一連の、時には驚くべき発見の中には、健康のさらなる向上に有用と思われる情報が含まれる。皮肉なことに、「インテリジェントデザイン説」の支持者や進化論反対派が、進化論へ新たな挑戦状を突きつけようとしていた時期にこれらの発見が続いた。

この画期的な研究は、9件の素晴らしい他の研究と共に、社会や科学の進歩に与えるその影響の大きさゆえ2005年の科学的進歩ベスト10に選出された(Science誌2005年12月23日号掲載予定)。

多数の研究が遺伝子レベルの進化を探った。2005年10月、ある国際研究チームがチンパンジーゲノムのマップを解明した。さらに、ヒト遺伝子における1塩基多型に関するこれまでで最大規模の国際的研究が進行中である。ヒト進化の歴史が、さらに詳しく解き明かされるであろう。これら2件の研究はエイズから心臓病まで、さまざまな疾患の研究に役立つ新たな材料を提供しており、将来のオーダーメイド遺伝子医療に向けた土台になると思われる。

1918年に世界的に大流行したインフルエンザウイルスの塩基配列が解明されたことは医学により直接的な影響を与えたであろう。アラスカの永久凍土に埋葬された犠牲者の遺体から回収され、慎重に再構築されたインフルエンザ遺伝子の驚くべき物語はぞっとする結末を迎えることになる―この恐ろしいインフルエンザはトリウイルスとして再来しているようである。20世紀におけるトリインフルエンザの進化を解明することは、現在のトリインフルエンザによる脅威を予測し、それに立ち向かう上で役立つであろう。

その他の研究では、DNAにおける小さな変化がいかに劇的な進化をもたらすかが示された。一方、鎧となる鱗板を失い、海に生息する種から陸に囲まれた湖を住処とする複数の種へと進化を遂げたアラスカのトゲウオのように、たった1つの遺伝子が変化するだけで1つの種が複数の種に分化する可能性も明らかになった。

ゲノムを超えて、研究者達は芋虫からコオロギにいたる多数の生物で現在起こっている進化を観察し、何を食べるのか、いつ交尾するのかといった行動上の差異だけでも1つの種を2つの種に分化させるに十分である可能性を発見した。これらの骨の折れる観察とその他の実験は、2005年に行われた進化の研究が、1859年の進化論発表と同様に大きな意義を持つことを証明している。 Science誌は、2005年に達成されたその他9件のめざましい科学的業績についても紹介している。1位を除いて、以下に紹介するものの順位は不同である。

Planetary Safaris(惑星探検旅行):月、水星、金星、火星、すい星、隕石、土星あるいは太陽系の果てまで到達したか、あるいは旅の途中にある宇宙探査機により、惑星に関する新たな発見が多数もたらされた。中でも特筆すべきは、欧州で開発された探査機ホイヘンスが土星最大の月、タイタンに着陸したことであろう。タイタンへの旅によって、降水回数は少ないものの大量に降る液体メタンの雨がタイタンの地形を形成し、またこの雨が非常に興味深い水循環で雨を降らせていることが明らかになった。

A Rich Year for Plants(植物は大豊作の年に):開花をはじめとする植物にまつわるミステリーを解き明かす分子レベルの重要なヒントが得られた。たとえば、植物分子生物学者により、季節性の花形成を促す信号の正体が突き止められた。その他にも、開花を促す遺伝子やRNAの驚くべき貯蔵庫にスポットライトが当てられた。

The Nature of Neutron Stars(中性子星の性質):新しい装置により中性子星の最も激しい振る舞いが鮮烈に描き出された。2004年12月27日に記録された、天の川の中心近くから放射されている放射線の短く強力なパルスが、短いガンマ線バースト、すなわち古い中性子星2個、もしくは中性子星とブラックホールが急激に融合した結果生まれた可能性が示唆された。

Brain Wiring and Disease(脳内配線と疾患):複数の研究により、統合失調症、トゥレット症候群、失読症などの疾患が胎児期における脳の神経回路の「誤配線」に起因する可能性が示唆された。

Where Did Earth Come From?(地球はどこからやってきた?):太陽系の材料物質とよく似た地球の岩石と隕石を見直したところ、それらの原子が著しく異なっていることが判明した。では、地球を組み立てているブロックは一体どこからきたのだろう。太古の地球の物質は太陽系とは別の場所からやってきたという説もあれば、太古の地球の部分は地球の奥深くに沈んでしまって今では見ることができなくなっているとする説もある。

Key Proteinís Close-up(重要な蛋白質をクローズアップ):電位依存性カリウムチャンネルのこれまでで最も詳細な分子像が明らかになった。これらのチャンネルはカリウムイオンを細胞の内外へと導く門番役の蛋白質であり、コンピュータが機能するにはトランジスタが不可欠であるように、これらのチャンネルは神経や筋肉が機能する上で不可欠である。

Changing Climate of Climate Change?(気候変動をめぐる風潮の変化):人類と地球温暖化を関連づける証拠が次々と示され、米国の政治家も注目し始めた。深海での水温上昇や非常に強力な熱帯低気圧の増加から、減少を続ける北極海の氷や渡り鳥の渡りパターンの変化まで、気候変動を科学的に示す証拠は2005年に増加の一途をたどり、科学者以外の人々の関心を引くようになったようだ。

Cell Signaling Steps Up(細胞シグナリングが前進):細胞シグナリングネットワークのインプットとアウトプットを同時に追跡することによって、細胞がどのように周囲の化学的または環境的なシグナルに反応するのかがダイナミックに描き出された。たとえば研究者らは、プログラムされた細胞死へ向かわせるネットワークに関連したおよそ8,000個にのぼる化学シグナルのモデルを作成した。

ITER Lands in France(ITER建設地はフランスに決定):世界初の核融合炉、国際熱核融合実験炉(ITER)の建設地は青森県六ヶ所村ではなく南フランスのカダラッシュに決定し、建設地をめぐる争いがついに決着した。ITERの目的の1つは、地球上で太陽エネルギーを再現し、核融合による発電を行うというものである。

Scienceís Breakdown of the Year -- U.S. Particle Physics(Science誌が選ぶ2005年の残念な出来事ó米国の素粒子物理学):Science誌が選ぶ今年の残念な出来事は米国の素粒子物理学である。2件の大規模研究が中止され、既存の3つの加速器のうち1つが閉鎖されるという。米国の計画が崩れると、世界中の素粒子研究に影響が及ぶ恐れがある。その一方で、多少なりとも明るいニュースが聞かれた。世界中の研究者が素粒子物理学の将来を握る数十億ドル規模の世界的施設、国際リニアコライダー(ILC)建設への取り組みを継続しているのだ。

Areas to watch in 2006(2006年に注目すべき分野):Science誌が2006年話題になると予測する分野とテーマは、トリインフルエンザに対する薬剤・ワクチンの開発、ヒトでのRNA干渉、高温超伝導体、細菌の系図、2個の中性子星の結合と超高エネルギー宇宙線(宇宙で最速の原子核)の発見である。また、ハシジロキツツキの生息や液体のように流れる固体ヘリウムの証拠についても研究者の探求は続くだろう。

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1848年に創設された米国科学振興協会(AAAS)は、世界最大の総合科学機関として、Science誌(www.sciencemag.org)を発行しています。AAASは、約262の関連科学機関・学術団体、約1,000万人の皆様に貢献しています。今日、Science誌は、ピアレビューのある総合科学誌として世界最大の発行部数を誇り、購読者数は総計約100万人にのぼります。非営利団体であるAAAS(www.aaas.org)は、科学政策におけるイニシアチブ、国際プログラム、科学教育などを通して「科学の進歩と社会への貢献」を実現すべく、すべての人々に門戸を開き、その使命を果たしています。最新の研究ニュースは、AAASが提供する科学ニュースホームページ、EurekAlert!(www.eurekalert.org)にてご覧いただけます。


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