研究者らにより、マウスにおいて細胞がリプログラミングを行うメカニズムが明らかにされた。この知見は、組織の修復と再生を促進する新しい治療薬をもたらす可能性がある。科学者らは以前に、成熟した分化済みの「成人」の細胞を操作して、総称してOSKMと呼ばれる4つの転写因子を発現させると、それらの細胞は未成熟の状態に戻り、別の細胞種に分化する能力を持つことを示していた。この以前の研究は、実験室のシャーレの中で増殖させた細胞で行われたものであった。このような「リプログラミング」が生きた動物の体内で起こるのかどうか、またもしそうであれば如何にしてであるのかは、明らかでない。Lluc Mosteiroらは、マウスモデルを用いて細胞リプログラミングの研究を行った。その結果、OSKMがin vivoでリプログラミングを引き起こすことが分かったが、そのメカニズムは複雑なものであった。OSKMは、細胞の障害と細胞の老化（細胞が分裂を停止するが死滅しない状態）を引き起こすようである。老化した細胞は、近接する細胞のリプログラミングを促進するある種のタンパク質を分泌する。これには、インターロイキン6と呼ばれる炎症性サイトカインが含まれる。著者らは、損傷した組織内には老化した細胞が蓄積することを指摘し、今回明らかにされたリプログラミングのメカニズムは組織修復の正常なプロセスに寄与する可能性があると推測している。もしそうであるならば、このメカニズムを利用して組織修復を促進する治療薬を開発できる可能性があると考えられる。
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