立法者および政策決定者は、法律および政策において「性別」を定義する必要があるとき、生物学または保健科学の分野における定義に頼ることが多い。しかし、Maayan Sudaiらは本誌Policy Forumの中で、こうした慣習は健全なガバナンスのように見えるが 、非合理的で意図されない、時には害を及ぼす結果をもたらす可能性があると主張している。この著者らによれば、科学における性別が、法律および政策の領域でどのように解釈され、また適用(または誤用)される可能性があるのかについて、研究者たちは自覚する必要がある。科学者による性別の定義およびその使用と、政策決定者による同じ概念と定義に対する意味付けと適用の仕方との間には、ほとんど関係がないことが多い。例えば後者により、LGBTQ+の権利と保護といった、政治的に争点となっている様々な問題に関する政策を擁護あるいは反論するために用いられる場合がそうである。今回Sudaiらは、こうした問題への注意を呼びかけ、生物学や法律との関連で性別の概念を規定することにみられる中心的な懸念について要約している。著者らは幾つかのアプローチを提案しているが、これらは科学者にとって、自分たちの研究内容が他の人たち、とくに科学研究の世界の外にいる人たちによってどのように解釈される可能性があるのかを理解するうえで、またそうした研究内容が支持できる、あるいは支持できない前提や立場についてより明確化できる領域を明らかにするうえで助けとなるものである。「生物学的な性別の概念の科学的な使用において、明確さ、正確さ、および厳密さが欠けていると、そのために生物学的な性別に関する科学的なコンセンサスについて立法者が誤った理解や解釈をするリスクが高まる」と、Sudaiらは記している。「有害なまたは恣意的な政策を正当化するために科学が利用される場合、科学研究において性別に関する考察、概念化、および適用がどのようになされているかについて、思慮深く、倫理的で説明責任のある判断・行動が極めて重要となる。」
Journal
Science
Article Title
Law, policy, biology, and sex: Critical issues for researchers
Article Publication Date
20-May-2022