人工知能(AI)技術の使用は急速に発展及び拡大しており、AIの倫理的使用を導くための規制や政策といった取り組みはそのペースに追い付けていない。Cason SchmitらはPolicy Forumで新たなAI規制の方法を提案している。知的財産(IP)権の管理に使用される既存の2つの法的手段 ―― コピーレフトライセンスとパテントトロール ―― を活用する方法で、彼らはその方法をCAITE(Copyleft AI with Trusted Enforcement:信頼性の高いエンフォースメントでのコピーレフトAI)と呼んでいる。AI技術の急速な発展と幅広い採用は常に規制機関の監視をしのぐ勢いで進んでおり、おおむね政策不十分という結果に陥っている。しかし、AIは日常生活のほぼ全ての面に影響を及ぼしうることを考えると、的確かつ倫理的なAI使用を確保するための規制は極めて必要性が高い。Schmitらはこの必要性に対応するために、IP法の法的な枠組みと仕組みを手直しして、AIの活用とトレーニングデータセットにおける倫理のエンフォースメントに向けた、IP法とは微妙に異なる新システムを作り出すことを提案している。Schmitらは、作成されたコンテンツの幅広い共有を可能にするために従来使用されている「コピーレフトライセンス」と、技術開発の妨げだと批判されることの多い「パテントトロール」モデルを組み合わせることで、倫理的AIのためのCAITEガバナンスモデルを開発している。CAITEモデルでは、AI製品及びそれらに基づく全ての派生製品は一連の倫理的諸条件の制約を受ける。Ethical Use Licenses(倫理的使用ライセンス)のエンフォースメントは信頼できる中央組織が担当する。その組織は、コミュニティが指名した非政府のAI開発者・ユーザーグループが率いることが望ましい。著者らによると、CAITEシステムはコミュニティが主導する柔軟な方法でAIの倫理的な実施を奨励及び強化するシステムで、政府による従来の監視を柔軟そして法的に支援できるという。
SchmitはPolicy Forumの補足として、ChatGPT(AIチャットボット)に倫理的AI使用をどう管理すべきかについて助言を求めた。検討すべき重要事項については合理的な要約が回答として得られた。しかしChatGPTは、ガバナンスをどう実施すべきかなどの難しい質問については軽く流した。質問の回答のイメージは、宣伝用資料のマルチメディアセクションに掲載されている。
Journal
Science
Article Title
Leveraging IP for AI governance
Article Publication Date
17-Feb-2023