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極薄膜シリコンチャンネル層トランジスタ「HiSIM-SOTB」が国際標準に認定

Hiroshima University

このニュースリリースには、英語で提供されています。

国立大学法人 広島大学HiSIM研究センターが、独立行政法人 産業技術総合研究所(以下、産総研という)をはじめとする産・官の協力を得て開発した、トランジスタコンパクトモデル(注1)「HiSIM-SOTB(Hiroshima university STARC IGFET Model Silicon-on-Thin BOX)」が、2014年6月20日に米国・ワシントン市で開催されたSilicon Integration Initiative (Si2)、Compact Modeling Coalition (CMC)(注2)会議において、約2年にわたる国際標準化活動を経て国際標準モデルに選定され、2014年12月18日に、産業界の利用に耐える標準モデルとして公開されることが決定しました。この決定を受けて、広島大学は、2015年1月9日からHiSIM-SOTBをHiSIM研究センター・ホームページ(http://www.hisim.hiroshima-u.ac.jp/)にて一般公開します。これにより、極低電圧分野の集積回路設計・製品開発に迅速に対応できる体制が整います。

HiSIM-SOTBは、集積回路の動作電圧を低減して超低消費電力化を実現できるトランジスタ構造として実用化が期待されているSOTB-MOSFETの特性を正確に再現します。この成功は、広島大学HiSIM研究センター(マタウシュ・ハンス ユルゲン センター長)の三浦道子教授と産総研 ナノエレクトロニクス研究部門(安田哲二 研究部門長)エレクトロインフォマティックスグループの小池帆平 研究グループ長を中心とした研究チームによるもので、広島大学によるトランジスタモデル開発と、産総研によるトランジスタ特性の再現検証のループを迅速に回した結果です。HiSIM-SOTBは、トランジスタの動作に必要な電圧を1 Vから0.4 Vへ大幅に引き下げた場合の回路動作を正確に再現することを可能としました。

HiSIM-SOTBでは、極薄膜SOI (シリコンチャネル層)上部と下部、基板上部の3カ所の表面ポテンシャルをポアソン方程式を解いて正確に求めます。基本式の本質のみを簡潔にまとめることによって、これを実現しました。これを解くために3次のニュートン方程式の数値解を安定に求めるという難問の解決が必要でした。しかし、適切なアルゴリズムを開発した結果、基板濃度の変更や基板バイアスの印加によるキャリア分布の変化を正確に再現することができました。平行してコンパクトモデルとしての利便性を損なわないよう、計算時間を短縮するさまざまな工夫をしています。HiSIM-SOTBは究極のコンパクトモデルとして完成し、あらゆるトランジスタ構造に対応できるモデルとなっています。

限られた時間内で問題を解決し、HiSIM-SOTBを標準化に足る完成度にまで開発できた理由は、これまでの標準化活動を通して、産・官・学それぞれの強みを生かす協力体制を迅速に構築できたためといえます。デバイスが完成したときに、すでにそれらの回路特性評価も終わり、大規模回路設計ができる環境が整ったという理想的なシナリオを実現することができました。

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【参考】

注1 トランジスタコンパクトモデル

集積回路の回路設計に用いられるトランジスタの端子に電圧をかけた時に端子を流れる電流量などの特性を数式で記述したモデル。回路シミュレーターから呼び出され、与えられた端子電圧に対して端子電流を返します。大規模回路のシミュレーションを行うために、正確性と高速性のバランスが求められます。

注2 Silicon Integration Initiative (Si2), Compact Model Coalition (CMC)  

Si2は、半導体設計技術の標準化を進める非営利団体。半導体業界を中心に世界の約80社が参加。本部は米国テキサス州オースチン。CMCは、その中で、コンパクトモデルの国際的・非排他的標準化を行い、その普及を図ることを目的とする活動を行っています。約40社の有力半導体メーカーとEDAベンダーが参加しています。主に大学が開発したモデルを、産業界の実用条件で評価して最良のものを標準モデルとして選定し、選定されたモデルの開発・維持を技術・資金両面で支援します。標準モデルは商用のツールに組み込まれ幅広く流通しています。現在広く使われているMOSFETのモデルBSIMや高耐圧MOSFETモデルHiSIM_HVは、CMCの標準モデルとなったことで普及しました。

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