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カプサイシンが引き起こす痛みの増強メカニズム

TRPV1活性化はアノクタミン1の活性化を引き起こす

National Institutes of Natural Sciences

このニュースリリースには、英語で提供されています。

唐辛子に含まれる辛味成分であるカプサイシンが感覚神経にあるTRPV1(トリップ・ブイワン)を活性化することで辛さ(痛み)が生じることは10年以上前から広く知られていました。同じように、アノクタミン1もTRPV1と同じ感覚神経に発現しており、TRPV1とは独立して痛みを発生させていることが知られていました。今回、自然科学研究機構 生理学研究所(岡崎統合バイオサイエンスセンター)の高山靖規特任助教と富永真琴教授は、富山大学の歌大介助教と生理学研究所の古江秀昌准教授との共同研究によって、TRPV1が活性化するとTRPV1に結合したアノクタミン1が強力に活性化するために痛みが増強することをマウス感覚神経および脊髄を用いた解析によって明らかにしました。また、アノクタミン1活性を薬で阻害することが疼痛緩和に効果的であることも証明しました。本研究結果は、米国科学アカデミー紀要に掲載されます。

研究グループは、マウス感覚神経のTRPV1とアノクタミン1という2つのイオンチャネルに注目しました。そして、TRPV1の活性化に伴いアノクタミン1が活性化されること、また、この連続するイオンチャネル活性化がカプサイシンによる痛みを増強させることを発見しました。

 カプサイシンによって感覚神経にあるTRPV1が活性化すると神経が興奮し、焼けるような痛み(灼熱痛)が引き起こされます。熱湯などによってもTRPV1は活性化しますが、カプサイシンの作用はより強力です。TRPV1はナトリウムやカルシウムなど複数種の陽イオンを通すイオンチャネルですが、カプサイシンによる灼熱痛は神経細胞外から細胞内へ入ってきたナトリウムイオンの作用によると信じられてきました(図1左)。しかし、今回の研究によって、クロライドなど陰イオンを通すアノクタミン1がTRPV1を介して細胞内に入ってきたカルシウムによって活性化されることで細胞の外にクロライドが放出される結果、さらに神経興奮が増強されて灼熱痛が生じるという新規メカニズムが明らかになりました。中枢神経と異なり、感覚神経では細胞内クロライド濃度が高いのでチャネル開口によってクロライドイオンは流出してより神経は興奮するのです。しかも、TRPV1とアノクタミン1は物理的に結合しており、両者間の距離は理論上20 nm以下と非常に近いことが判明しました(図1右)。

 また、マウスの足にカプサイシンを投与した時に観察される痛み行動(足舐め行動)は、アノクタミン1阻害剤によって抑制されました(図2)。さらに、感覚神経から脊髄の中で別の神経に痛み信号が伝わる割合もアノクタミン1阻害剤によって減少することが判明しました(図3)。

 すなわち、TRPV1が強力に活性化された時の痛みにはアノクタミン1の阻害剤が有効であると考えられます。

本研究は文部科学省科学研究費補助金の補助を受けて行われました。

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今回の発見のポイント

1. 灼熱痛の引き金になるTRPV1はアノクタミン1と相互作用していました。
2. TRPV1−アノクタミン1相互作用によりカプサイシンによる感覚神経の興奮性が高まっていました。
3. アノクタミン1を阻害することでカプサイシンによる痛みが和らぐことが示されました。

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