Public Release: 

動物の磁気を感じる能力の可視化に向けて

微小空間で光化学反応が磁場に反応する様子を直接観

University of Tokyo

このニュースリリースには、英語で提供されています。

東京大学大学院総合文化研究科のジョナサン・ウッドワード准教授(Jonathan Woodward)らの研究グループは、光化学反応が磁場(磁気)によって受ける影響を観測できるイメージング顕微鏡を開発しました。この光化学感応は、動物が地球上の微弱な磁場を感じて、渡りなどで行先を決める能力を司っていると考えられており、本装置を用いることによって、細胞内のさらに微小な空間で起こる光反応が追跡できるようになると期待されます。

 ある種の昆虫、魚、鳥、哺乳類は、磁場を感知する能力を持っていると考えられています。これは磁気感受能と呼ばれます。渡り鳥は進むべき方向を決めるのに地球上の磁場を使っている、などがその一例です。最近の研究によれば、クリプトクロームと呼ばれる一群のタンパク質、その中でも特にフラビンアデニンジヌクレオチド(FAD)という分子が磁気感受能に関係していると示唆されています。クリプトクロームが青色の光を吸収すると、クリプトクロームの中で多数のラジカル対ができます。そして、クリプトクロームを取り囲む磁場よって、これらのラジカル対はそれぞれ異なったスピン状態を示し、その結果、ラジカル対の反応性が変わってくる、という機構です。しかし、生きた細胞内で生ずるラジカル対が、実際に磁場によってどのように影響されるかを観測できる方法がこれまで存在していませんでした。

ウッドワード准教授の研究グループは、ラジカル対の化学や生物の磁場感受性を研究しています。今回、研究グループの一員であるルイス・アンテル(Lewis Antill)大学院院生が、FADから生じるラジカル対観察することのできる特殊な顕微鏡を用いて、1リットルの10億分の1のさらに百万分の4(4フェムトリットル(410-15リットル))リットルという極微小な体積中で、FADが微弱な磁場の影響を受ける様子を観察することに成功しました。これは、研究グループが開発したTOAD (transient optical absorption detection) イメージングという技術により開発した顕微鏡により可能となったもので、顕微鏡の開発はジョシュア・ビアードモーア(Joshua Beardmore、当時博士研究員)博士、ウッドワード准教授が設計したものです。

 「将来的には、私たちが今回発表する論文内でも報告しているMIM (magnetic intensity modulation)と呼ばれる新しい顕微分光法によって、細胞内の磁場だけに反応している領域を可視化することができるようになると考えています」とウッドワード准教授は話します。「今回新しく開発したイメージ顕微鏡によって、生体を含むさまざまな重要な場面で光化学反応がどのように磁場から影響を受けているかを明らかにすることができるようになります。将来的には、動物が持っている驚異的な磁気を感知する能力について、その謎を解き明かすことに役立つと期待しています」と続けます。

ルイス・アンテル大学院生は、東京大学駒場キャンパスの国際環境学プログラム(Graduate Program on Environmental Sciences; GPES) に所属し、文部科学省からのGPES向け奨学金を受給しているイギリスからの大学院留学生です。また、本研究は日本学術振興会の科学研究費助成事業(課題番号「24350002」)の支援を受けて行われました。

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Publication

Joshua P. Beardmore, Lewis M. Antill, and Jonathan R. Woodward, "Optical Absorption and Magnetic Field Effect Based Imaging of Transient Radicals" Angewandte Chemie International Edition. Early View: 2015/6/3, doi: 10.1002/anie.201502591

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東京大学大学院総合文化研究科

東京大学大学院総合文化研究科 国際環境学教育機構

東京大学大学院総合文化研究科 国際環境学教育機構 ウッドワード研究室

ジョナサン・ウッドワード 准教授
東京大学大学院総合文化研究科
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