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1つの反応、2つの化合物、資源浪費ゼロ

Okinawa Institute of Science and Technology (OIST) Graduate University

化学分野では、有機化合物であるアルコールやエステルの効率的な生成法を発見することが共通の課題となっています。これらの化合物は様々な工業用途につながる重要な原料となるからです。アルコールは医薬品や凍結防止剤など、医療分野や産業分野において多数の用途があります。また、エステルは、食品や香水に特有の風味や香りを加える香料として食品・化粧品業界で広く利用されています。通常これら化合物の合成は、高温や汚染廃棄物が発生する腐食剤の使用など、過酷な環境下での作業を伴います。

沖縄科学技術大学院大学(OIST)のアビシェク・デュベイ博士とユージーン・ハサキン博士は、1つの手法でアルコールとエステルの両方を同時に生成し、廃棄物をゼロに抑える化学合成工程を開発しました。同工程では有害な試薬を使用する必要がありません。デュベイ博士とハサキン博士はそれぞれOISTの錯体化学・触媒ユニットとサイエンス・テクノロジー・グループに所属する研究者で、今回の共同研究の成果をACS Catalysisで報告しました。

デュベイ博士とハサキン博士はまず、分子の骨格を組み替えるメタセシス反応という有機化学でよく用いられる反応の1つをエステルにも適用可能かどうかを検討しました。まず化学反応によりエステルの中心部とその周辺部位の結合を切断し、さらにそれらの2つの断片が再結合される過程で、4つの異なるエステルが生成します。「このような分子の再構成をおこなえば、私たちは4つの生成物を得ることができるはずです」とハサキン博士は言います。「1つのエステルから4つの生成物が生まれるのです。原料と同じエステルが1つと、化学的に可能な3つの新しいエステルです」。

エステルはその構造によって匂いも大きく異なります。新しく作られた各合成物は特定の分子配列を有しているため、匂いも全く異なります。化学反応がどこまで進行したかも匂いの変化に大きく影響します。「最終的に得られる混合物の匂いは構成成分によって異なります。反応を中止して薬瓶の中の匂いを嗅ぐと、果物のようないい香りに驚くことがあります」とハサキン博士は述べたうえで、「台所に立って料理するのとは違い、化学物質を使った実験で匂いを嗅ぐことは賢明ではありません。しかしエステルを使った実験では、香りを楽しむことができるのが特権です」と実験の楽しさにも触れています。

新しく開発されたエステルの合成工程はさほど複雑ではありません。「たった1段階で求められるタイプのエステルを生成することが可能です。出発原料となるエステルをフラスコに入れて、そこへ触媒を加えたあと適温で加熱すると数時間後には任意のエステルの出来上がりです」とデュベイ博士は説明し、「以前と比べてより単純化された工程です」とその簡易性を強調します。今回の研究で合成されたエステル自体は既成の化合物ではあるものの、その合成法は今後まったく新しい分子や混合物の生成につながる可能性があります。

そしてさらに、エタノールを加えて反応条件を微調整することで、出発原料のエステルをアルコールに変換することができます。通常エステルからアルコールを作る工程は、高圧水素や専用機器の使用を伴う難しい作業です。一方、今回用いた新手法にはこのような複雑な工程は含まれず、より安全かつ容易な作業となります。

「この2種類の化学反応が発表されるのはどちらも今回が初めてで、既存の手法に取って代わる安価で環境に優しい化学合成経路となるはずです」と研究者たちは今後の期待をにじませました。

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