やっとのことで研究者らは、脳内でサーモスタットとして働くニューロンを射程に入れた。この発見は、体温を下げることが有益な状態、例えば外傷の回復期などで、治療介入として体温のコントロールに利用される可能性がある。生存にとって極めて重要な深部体温は、通常は37℃前後の狭い範囲に維持されている。このような見事な調節作用をつかさどる、脳の内部にある温度センサーに対する何十年もの研究にもかかわらず、科学者らはその背景にある温度の分子センサーを同定することができなかった。今回Kun Songらは、体温を検出・制御する視床下部の試料をマウスから得て、体温が生理学的な設定温度である37℃を超えて上昇すると反応して独自の活性を示すニューロンを同定した。さらに研究者らの発見によれば、これらのニューロンはイオンチャネルTRPM2を発現しており、高体温を検知して過剰な体温上昇を防ぐだけでなく、マウスの発熱モデルの実験で示されたように、感染に対する反応による体温の上昇も抑制する。研究者らのアプローチにより、マウスで深部体温を遠隔でコントロールする方法が明らかとなり、深部体温の変化が外傷の回復、エネルギー消費、肥満、寿命などのプロセスに及ぼす作用に関するさらなる洞察が得られることになろう。
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