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ベルト型新規医療機器に肥満2型糖尿病の治療効果があることを発見−現在は最適な使用回数を検討中

薬を用いない、あるいは併用による内臓脂肪減少および血糖改善

Kumamoto University

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IMAGE: Mild electric stimulation (MES) & heat shock (HS) improves metabolic abnormalities in the diabetic mouse model. view more

Credit: Dr. Tatsuya Kondo

 熊本大学大学院生命科学研究部代謝内科学分野の近藤龍也講師、荒木栄一教授らは、同大薬学部遺伝子機能応用学分野の甲斐広文教授らと共に開発してきた熊本発の2型糖尿病治療機器(温熱微弱電流併用療法)の実用化に向けた臨床試験の結果を公表しました。  

本治療機器は、微弱電流(MES: Mild Electrical Stimulation)と温熱 (HS: Heat Shock)を同時に伝達する特殊ゴムを介して腹部に直接刺激を与え、内臓脂肪減少および血糖改善効果をもたらすものです。2014年にeBioMedicine誌に臨床試験(1回60分を週4回施行)で、肥満2型糖尿病男性のHbA1c値*1を0.43%低下させることを報告しましたが、今回は男女問わず週2回、4回、7回の群に振り分け、12週間施行することにより、本治療をどれくらいの頻度で行うと最も効果があるのか、治療効果を判定しました。

本研究の成果により、2型糖尿病治療に実用的な本医療機器の治療最適化の情報が得られ、実際の治療適用にまた一歩近づいたことになります、  

本研究は、2016年10月19日(水)に『Scientific Reports』オンライン版に発表されました。Scientific Reports は英国科学誌Natureの姉妹誌で、注目度の高いオープンアクセス誌です。

<本研究のポイント>

    * この臨床研究は、肥満2型糖尿病患者男女60名を対象に、微弱電流と温熱刺激併用治療の最適化を検討するために施行したものである。

    * 全体で内臓脂肪面積 11.7 cm2の有意な減少、HbA1c 0.36%の有意な低下を確認。

    * 内臓脂肪面積…週2回: 5.37 cm2減少、週4回: 14.24 cm2減少、週7回: 16.45 cm2減少。

    * HbA1c値…週2回: 0.10%低下、週4回: 0.36%低下、週7回: 0.65%低下。

    * DPP-4阻害薬との併用が、より有効性が高い。

<論文名>

Activation of heat shock response to treat obese subjects with type 2 diabetes: a prospective, frequency-escalating, randomized, open-label, triple-arm trial

(肥満2型糖尿病患者に対する熱ショック応答経路活性化:前向き介入頻度別ランダム化3群試験)

<電子ジャーナル: Scientific Reports >

Scientific Reports 6, Article number: 35690 (2016) 

doi:10.1038/srep35690

URL: http://www.nature.com/articles/srep35690

<著者名>

近藤龍也、後藤理英子、小野薫、北野さやか、佐藤美希、井形元維、河島淳司、本島寛之、

松村剛、荒木栄一(熊本大学大学院生命科学研究部代謝内科学分野)

Mary Ann Suico、甲斐広文(熊本大学生命科学研究部遺伝子機能応用学分野)

<研究の背景>  

2型糖尿病は、過剰な内臓脂肪蓄積を根本とした慢性炎症に起因する全身臓器障害性疾患であると言われています。高血糖や過剰な遊離脂肪酸による慢性的な代謝異常が、人体に本来備わっているストレス抵抗性を低下させ、インスリン抵抗性*2やインスリン分泌低下などの症状を悪化させます。

 細菌からヒトまで進化的に受け継がれているストレス応答系(ストレスに反応して起きる生体や細胞のシステム)の一つに熱ショック応答経路(HSR: heat shock response)*2があります。2型糖尿病では、このHSR低下が認められ、種々の方法でHSRの主要タンパク質であるHSP72の機能回復を行うと糖代謝異常が改善することが示されてきました。本研究者らはこれまでに、微弱電流(MES)と温熱(HS)の適切な併用(MES+HS)が、HSP72を効率よく機能させ、糖尿病モデル動物の血糖値を低下、耐糖能*4およびインスリン抵抗性を改善し、内臓脂肪量と肝臓での脂肪蓄積を減少させることを報告しました(PLoS ONE. 2008)。またインスリン分泌低下型糖尿病モデルマウスにおいて、MES+HSによりインスリン分泌を担う膵β細胞を保護する効果も認めました (Diabetes. 2012)。これらの基礎研究により、HSR活性化が糖尿病の重要な治療標的であることが明らかとなりました。そこで今回、実用化に向けて、実際に臨床試験を行い、最も治療効果の高い使用回数を調べる事にしました。

<研究の内容>

 これまでの研究で、肥満2型糖尿病男性(腹囲85 cm以上)40名を対象にMES+HSを施行したところ、メタボリックシンドローム該当者に認められた有効性(空腹時血糖低下およびインスリン抵抗性改善、内臓脂肪減少)に加えてHbA1c値の有意な改善(- 0.43%)を認め、対象者の52.5%が糖尿病治療目標として掲げられるHbA1c 7.0%未満を達成しました。さらに末梢血単球において、MES+HS介入はHSP72の活性化を誘導し、慢性炎症性シグナルの低下をもたらしました (eBioMedicine. 2014)。

 今回は、男女を問わず60名の肥満2型糖尿病患者に対して、週2回、週4回、週7回の3群(1回あたり60分施行は以前と同様)に分け治療を行ったところ、施行頻度が高いほど内臓脂肪減少効果およびHbA1c値の低下効果を認めました。また慢性炎症、脂肪肝マーカー(脂肪肝の診断指標値)、腎機能および脂質プロファイル(脂質に関連する指標値)の改善を認めました。さらに、本治療を、現在糖尿病治療に最も多く用いられているDPP-4阻害薬*5と平行して加えた場合、より強い血糖改善効果を示しました(Scientific Reports. 2016)。

 これらの基礎及び臨床研究の結果から、MES+HSによるHSR活性化は糖尿病治療の新たな選択肢となり得ることが示されました。また、本医療機器はベルト型の機器を身体に装着するだけと患者さんに負担が少なく、運動療法に類似した効果を期待できるため、過体重や高齢、四肢の障がいなどにより運動療法が困難な状況においても適切な治療が可能となることが期待されます。

*1: HbA1c値:その時点から過去1、2ヶ月の間の血糖状態をあらわす値。

*2: インスリン抵抗性:インスリンが、本来の十分な血糖低下効果を示さない状態。

*3:熱ショック応答経路 (HSR):温熱などの適度な刺激を与えることで特異的な遺伝子(HSP72など)が活性化される機序。組織や細胞保護作用がある。

*4:耐糖能:血糖値を正常レベルに保つ全身的な糖の処理能力。

*5:DPP-4阻害薬:インスリン分泌を促進するインクレチンを分解する酵素DPP (dipeptidyl peptidase)-4を阻害して血糖改善を示す薬剤。

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