Public Release: 

腸内細菌叢の一つであるフソバクテリウムが 食道がんの進展・予後に関与していた!

Kumamoto University

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IMAGE: A comparison of F. nucleatum DNA content between cancerous and normal tissues shows higher levels of F. nucleatum in cancerous tissue. view more

Credit: Professor Hideo Baba

1. 研究の背景と目的

人体には菌種にして数百種、数にして100 兆個以上の腸内細菌が生息しており、体の恒常性を保つ重要な役割を果たしています。近年、腸内細菌叢(腸内フローラ)は、がん、肥満、炎症性腸疾患、非アルコール性脂肪性肝疾患など様々な疾患との関連が報告され、注目を集めています。がんの発症に関しては、胃がんにおけるヘリコバクター・ピロリ感染がよく知られています。フソバクテリウムは主に上部消化管、特に口腔内に生息する細菌で、歯周病の原因菌として認識されていますが、人の健康に対する影響においては腸内細菌の中ではあまり目立つ存在ではありませんでした。近年、大腸がんの組織からこのフソバクテリウム(Fusobacterium nucleatum)が高頻度に検出され、大腸がんの進展に影響を与える可能があると報告されました。そこで、我々は、より口腔に近い“食道”のがんにおいてもフソバクテリウムが重要な役割を果たしているのではないかと考え本研究に取り組みました。

2. 研究の内容

熊本大学医学部附属病院で手術を行った325 人の食道がん患者を対象としました。切除された食道がんのがん組織と正常組織(非がん組織)からDNA を抽出し、遺伝子の量を調べる「リアルタイムPCR 法」を用いて組織内のフソバクテリウムを検出したところ、がん組織からは正常組織よりも有意に多くのフソバクテリウムのDNA国立大学法人熊本大学が検出されました(図1)。また、がん組織内からフソバクテリウムが検出された患者は325 人中74 人(約23%)存在することがわかりました。食道がん組織からフソバクテリウムが検出された患者と検出されなかった患者を二つのグループに分けて手術後の生存期間を比較したところ、フソバクテリウムが検出された患者のグループはそうでないグループに比べ有意に生存期間が短いことがわかりました。 フソバクテリウム陽性と陰性の食道がんから抽出したRNA を用いて、フソバクテリウム陽性食道がん患者で変動している遺伝子の解析を実施したところ、フソバクテリウム陽性食道がん患者では炎症性サイトカイン(炎症を促すタンパク質)に関連する一連の遺伝子群が変動していることがわかりました。これらのデータを詳細に解析したところ、サイトカインの中でもCCL20 やCXCL7 といったケモカイン(白血球の運送に関するタンパク質)の遺伝子の量が増加していることがわかりました。

今回の研究によって、口腔内常在菌であるフソバクテリウム(Fusobacterium nucleatum)がケモカインを介して、食道がんの発育・進展に関与している可能性が示唆されました。腸内細菌叢はプロバイオティクス(Probiotics;人体に有益な腸内細菌叢ならびにこれらを含む食品・製品)やプレバイオティクス(Prebiotics;腸内細菌叢のバランスを改善する作用がある物質)により後天的に変化させることができます。今後の研究において、食道がん進展におけるフソバクテリウムの役割がより詳細に解明されれば、がん治療の新たな創薬に繋がる可能性があります。

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【論文名】

Human microbiome Fusobacterium nucleatum in esophageal cancer tissue is associated with prognosis

【著者名・所属】

Kensuke Yamamura,1 Yoshifumi Baba,1 Shigeki Nakagawa,1 Kosuke Mima,1 Keisuke Miyake,1 Kenichi Nakamura,1 Hiroshi Sawayama,1 Koichi Kinoshita,1 Takatsugu Ishimoto,1 Masaaki Iwatsuki,1 Yasuo Sakamoto,1 Yoichi Yamashita,1 Naoya Yoshida,1 Masayuki Watanabe,2 Hideo Baba1

1Department of Gastroenterological Surgery, Graduate School of Medical Sciences, Kumamoto University, 1-1-1 Honjo, Chuo-ku, Kumamoto 860-8556, Japan 2Department of Gastroenterological Surgery, Cancer Institute Hospital, Japanese Foundation for Cancer Research, 3-8-31 Ariake, Koto-ku, Tokyo 135-8550, Japan

【掲載雑誌】

Clinical Cancer Research

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