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水素生成量が1桁増加する光触媒の開発に成功

―太陽光による水素製造の実現に新たな一歩―

Kobe University

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IMAGE: メソ結晶の空間を利用して、TiO2メソ結晶からSrTiO3メソ結晶を一段階の水熱処理によって合成した。 view more 

Credit: Kobe University

神戸大学分子フォトサイエンス研究センターの立川貴士准教授らと、大阪大学産業科学研究所の真嶋哲朗教授らの研究グループは、光触媒作用による水素生成量が1桁増加する光触媒注1)の開発に成功しました。

水素は、再生可能エネルギーである太陽光と水から製造できる、次世代のエネルギー源として注目されており、水素を高効率に製造できる光触媒の開発が望まれています。しかしながら、従来の光触媒では、電子と同時に生成する正孔(電子が抜けた孔)のほとんどが触媒表面上で再結合して消失してしまうため、水から水素への光エネルギー変換効率が伸び悩んでいました。

今回、立川准教授らは、電子と正孔を空間的に分離できる、光触媒の大きさ・配列の均一性をあえて崩したメソ結晶注2)光触媒の合成方法を開発しました。その結果、従来をはるかに超える水素生成の光エネルギー変換効率(約7%)注3)を有する光触媒の開発に成功しました。

今後は、有用性が実証されたメソ結晶化技術を応用することで、太陽光による高効率な水素製造の実現を目指します。

本研究成果は、平成29年4月6日(独国時間)にドイツ化学誌「Angewandte Chemie International Edition」のオンライン版で公開されました。

研究の背景と経緯

昨今の環境・エネルギー問題の高まりを受け、次世代エネルギーのひとつである水素に注目が集まっています。この水素を再生可能エネルギーである太陽光と地球上に豊富に存在する水からつくり出すことができる光触媒の開発が期待されています。一方、実用化のためには水素供給価格を低く抑えることが求められ、光エネルギー変換効率のさらなる向上が必要です。

光触媒に光が照射されると、触媒表面に電子と正孔(電子が抜けた孔)が生成し、この電子が水の水素イオンを還元することで水素が得られます。これまで、多くの光触媒が開発されてきましたが、生成した電子と正孔のほとんどが光触媒表面で再結合し、消失してしまうため、光エネルギー変換効率が伸び悩んでいました。

今回、立川准教授らは、粒子の配列を三次元的に制御し、電子と正孔を空間的に引き離す「メソ結晶化技術」の開発に成功し、従来の光触媒をはるかに超える光エネルギー変換効率を達成しました。

研究の内容

メソ結晶化技術:メソ結晶の合成手順は複雑な場合が多く、形状の制御も容易ではありませんでした。立川准教授らは、メソ結晶に存在するナノメートルスケールの空間を利用した「トポタクティックエピタキシャル成長注4)」という新しい合成法を開発しました。この合成法により、テンプレートとなる酸化チタン(TiO2)メソ結晶から、結晶構造の異なるチタン酸ストロンチウム(SrTiO3)注5)メソ結晶を、容易に1段階の水熱反応注6)で合成することに成功しました(図1)。さらに、反応時間を長くすることで、表面近くの粒子だけ、結晶の向きを揃えたまま大きく成長させることを見いだしました(図2)。

光触媒活性と原理:このSrTiO3メソ結晶に助触媒注7)を付着させ、水中で紫外光を照射したところ、約7%の光エネルギー変換効率で反応が進行することがわかりました(図3)。同じ条件で、メソ結晶化していないSrTiO3ナノ粒子について実験を行った場合、効率は1%に満たなかったことから、メソ結晶化により反応効率が1桁向上したことになります。 さらに興味深いことに、ひとつひとつの粒子を蛍光顕微鏡で観察したところ、生成した電子は表面の比較的大きなナノ結晶に集まることが示されました(図4)。

以上のことから、今回開発した光触媒では、紫外線照射によって生成した電子はメソ結晶内部のナノ粒子間を効率よく移動し、消失することなく表面に生成した比較的大きなナノ結晶に集まり、高い効率で水素イオンを還元し水素を生成することがわかりました(図5)。

本研究で見出されたメソ結晶の高い光触媒活性は、“メソ結晶の規則的な構造をあえて崩す”という逆転の発想から産み出されたもので、これまでにない新しい材料設計指針の開拓につながるものです。また、今回対象としたSrTiO3は立方晶であるため、分子吸着や反応のし易さという点において結晶面による違いはありません。したがって、ビルディングブロックであるナノ結晶の大きさと空間配置を制御するだけで、既存システムの光エネルギー変換効率を大きく向上できる可能性が示されたといえます。

今後の展開

本研究によってその有用性が実証されたメソ結晶化技術を可視光応答型光触媒に応用することで、太陽光でのエネルギー変換の高効率化を目指します。また、本研究で対象としたSrTiO3を含むペロブスカイト型金属酸化物はエレクトロニクス素子の基幹物質であることから、幅広い分野への応用展開が期待できます。

用語解説

※1):光触媒

光を照射することにより触媒作用を示す物質。代表的な光触媒として、アナターゼ型酸化チタン(TiO2)が知られている。本研究では、光を照射することで得られる触媒作用を利用して水を酸素と水素に分解している。

※2):メソ結晶

ナノ粒子が規則正しく三次元的に配列した結晶性の超構造体。数百ナノメートルからマイクロメートルのサイズで、ナノ粒子間の空隙に由来する2~50ナノメートルの細孔を有する。

※3):光エネルギー変換効率

入射する光子の数に対して、反応に利用された光子の割合。

※4):トポタクティックエピタキシャル成長

結晶上に同じ方位をもった複数の結晶を配列、成長させる方法。本研究で提案した新しい合成方法である。

※5):チタン酸ストロンチウム(SrTiO3)

ストロンチウムとチタンの複合酸化物で、ペロブスカイト構造をとる化合物。紫外光照射下で光触媒作用を示す。クロムなどの遷移金属を置換することで、可視光照射下でも光触媒作用を示すようになる。光触媒のほか、高い誘電率をもつことから様々なデバイスへの応用が期待されている。

※6):水熱反応

高温・高圧の熱水中で行われる化合物の合成あるいは結晶成長。

※7):助触媒

光触媒と組み合わせることで触媒反応を促進する物質。本研究では、水素生成を促進する材料を指す。

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