Public Release: 

世界初 胎生期マウスの内耳へのヒトiPS細胞由来細胞の移植に成功

ヒト遺伝性難聴の治療法開発につながる成果

Kumamoto University

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IMAGE: ヒトiPS細胞から効率的に細胞を分化させることで目的の細胞を大量に作成することが可能であり、またコネキシン以外の内耳細胞に特有なタンパク質の発現を多数確認した。さらに移植方法を検討することにより胎生期のマウス内耳への移植を可能とした。 view more 

Credit: Dr. Hiroki Takeda

熊本大学を含む研究者グループが、ヒトiPS細胞由来の内耳細胞を胎生期マウスの内耳へ移植し、細胞の体内での生着と、ヒト由来のタンパク質発現に世界で初めて成功しました。先天性難聴の約半数を占める遺伝性難聴の治療開発に繋がるとともに、胎生期内耳をターゲットとした研究の発展に大きく寄与する成果です。

[背景]

 先天性疾患の中で最も頻度が高いのは先天性難聴であり、その罹患頻度は新生児500~1000人当たり1人です。先天性難聴の約半数が遺伝性難聴で、治療として人工内耳や補聴器の適用があるものの、根本的な治療法は存在しません。

 ヒト遺伝性難聴においては、出生時にすでに難聴を伴って生まれることが多いため、確実な治療を行うには発症前、すなわち胎児期の治療が最も有効であると考えられます。特に「GJB6」遺伝子(タンパク質「コネキシン30」をコード)の欠損による難聴は、遺伝性難聴のうち内耳以外に病気を持たないケースの中で2番目に患者数の多い病気です。

熊本総合病院の蓑田涼生診療部長らは、これまでにコネキシン30欠損マウスの胎生期内耳に対して遺伝子治療を行うことによって難聴の出現が抑制されることを報告してきました。今回、蓑田部長や熊本大学の竹田医員、慶應義塾大学の研究者らは、これまで技術的難易度の高さから困難と考えられていた胎生期内耳への細胞移植にマウスを用いて世界で初めて成功しました。

[方法・成果]

 研究チームはまず、ヒトiPS細胞からコネキシン26やコネキシン30、ペンドリン等の内耳細胞に特異的なタンパク質を発現する内耳細胞を効率的に誘導・作成することに成功しました。完全に内耳細胞に分化する前の細胞を、正常マウスとコネキシン30欠損マウスの胎生期内耳に、先端のサイズを最適化したガラス管を用いて投与しました。移植細胞は、正常マウス、コネキシン30欠損マウスの双方において、内耳内の様々な部位に生着し、これら生着細胞の数は、正常マウスに比べてコネキシン30欠損マウスの方が多く、生着細胞の一部はコネキシン30を発現することがわかりました。

[今後の展開]

 生着細胞の数は、正常マウスよりもコネキシン30欠損マウスの方が多く、その生着細胞の一部でコネキシン30を発現していたという事実は、コネキシンの欠損が原因の遺伝性難聴に対する細胞移植治療を考えた場合、極めて重要な知見となります。つまり、細胞移植によって、欠損したコネキシン30を補うことができ、このコネキシンが正しく機能することで難聴が改善されるかもしれないのです。今後は、生着細胞の増加を図り、聴力改善を目指したいと考えています。難聴の予防が出来るかどうかは今後の課題です。

さらに、本研究においてヒト由来の細胞が異種であるマウス胎生期内耳に生着可能であることが明らかになりました。このことは、今後ヒト由来細胞を用いた治療法効果に関する生体内での実験がマウス胎児内で行える可能性を示しており、遺伝性難聴、内耳発生の研究推進に大きく貢献できると考えています。

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本研究成果は、科学ジャーナル「Scientific Reports」に平成30年1月31日掲載されました。

[Source]

Takeda, H. et al., 2018. Engraftment of Human Pluripotent Stem Cell-derived Progenitors in the Inner Ear of Prenatal Mice. Scientific Reports, 8(1). Available at: http://dx.doi.org/10.1038/s41598-018-20277-5.

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