Public Release: 

細胞の「かたち」や「ならび」を調節する仕組みを解明

Kumamoto University

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IMAGE: 上皮組織を構成する上皮細胞は頂端極性と平面内細胞極性というふたつの細胞極性を有します。特に、平面内細胞極性は近-遠位軸に沿った細胞の形態や秩序を持った細胞の配列に必須です。体幹から近い方を近位、遠い方を遠位といいます。 view more 

Credit: Dr. Koji Kikuchi

熊本大学の研究グループは、共同研究により、組織を構成する細胞の形態や配列を調節する新しい制御システムの解明に成功しました。

動物の組織を形成する上で、組織を構成する細胞は、適切な形態を取り秩序を持って配列する必要があります。こうした細胞の振る舞いは、1つの細胞の中で上下や前後など対極にある端の部分がそれぞれ異なる性質を持つ「細胞極性」により決定されます。例えば、ショウジョウバエの羽の表面には微細な毛が生えています。この毛は羽の表面を形作る一つ一つの細胞の、それぞれ体幹から遠い外側部分にだけ生えることで毛の向きが揃っています。これを「平面内細胞極性」(Planar Cell Polarity:以降、PCP)と言います。

細胞極性の形成が障害されると、組織が正しく形成されなくなり様々な疾患の発症に繋がります。また、細胞極性の維持は、組織を一定の状態に保つ(恒常性の維持)のに必要であり、破綻すると発がんやがんの悪性化の要因となります。

細胞極性の形成は細胞形態の変化を伴うため、細胞の形態を決める細胞骨格の動態変化が必要です。この時に、細胞骨格の動態変化は情報伝達物質(シグナル)のやりとりによって誘導される事が知られています。細胞骨格は動態変化の時にシグナルを受け取るだけでなく、何らかのシグナル伝達を返している可能性が示唆されていましたが、細胞骨格の動態とシグナル伝達機構を相互にリンクする制御メカニズムは未解明でした。

熊本大学の研究グループは、シグナル経路のひとつであるWnt5aシグナル経路がヒト子宮頸がん由来細胞の前後極性(細胞運動時の細胞のかたち)を制御する事に着目し、細胞骨格である微小管の動態とWnt5aシグナル経路をリンクする物質を探索しました。その結果、微小管結合タンパク質であるMap7/7D1を見つけ出し、このMap7/7D1がWnt5aシグナル経路における伝達物質の1つであるDvlと結びつくことで、Wnt5aシグナル経路と微小管動態を相互にリンクする事を明らかにしました。

Wnt5aシグナル経路は、上皮組織を構成する上皮細胞の平面内細胞極性の形成にも必須である事が明らかになっています。そこで、PCPを形成するショウジョウバエのさなぎの翅上皮組織、マウスの卵管上皮組織を用いて、PCP形成過程におけるMap7/7D1の機能を検討しました。その結果、ショウジョウバエでもMap7/7D1と同様のタンパク質(Ens)がDvl(ショウジョウバエではDsh)と結合し、Dv1(Dsh)が体幹から遠い遠位側に局在するよう制御することでPCPの形成に関与していることがわかりました。

さらに、Map7/7D1(Ens)はPCPを形成するマウスの卵管上皮細胞とショウジョウバエのさなぎの翅上皮細胞において、それぞれ卵巣や羽の付け根など体幹に近い近位側に偏って局在しました。局在化パターンやDvlあるいはDshとの結合といった、細胞内での振る舞いや性質が保存されていたことから、Map7/7D1とEnsの機能はPCP形成過程において生物の種を超えて広く保存され受け継がれている可能性が示唆されました。

本研究成果により、組織を構成する細胞の形態や配列を調節する新しい制御システムが解明されました。

本研究成果は、科学ジャーナル「EMBO Reports」に平成30年6月7日に掲載されました。

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[Source]

Kikuchi, K., Nakamura, A., Arata, M., Shi, D., Nakagawa, M., Tanaka, T., Uemura, T., Fujimori, T., Kikuchi, A., Nakanishi, H. (2018). Map7/7D1 and Dvl form a feedback loop that facilitates microtubule remodeling and Wnt5a signaling. EMBO Reports, e45471. doi:10.15252/embr.201745471

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