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超音波の新現象が社会の安全性向上につながる

構造物の損傷をより早い段階で非破壊的に評価可能に

Toyohashi University of Technology

豊橋技術科学大学機械工学系の石井陽介助教らの研究グループは、「板の中で二つの超音波を交差させたときに新しい三つ目の超音波が発生する現象」を初めて解明しました。この“三つ目の超音波”の強さは、材料の損傷状態に対して極めて敏感に変化するため、飛行機や発電所といった薄板構造物の非破壊損傷評価への応用が期待されています。特に、従来の技術では検出が難しいとされる材料疲労や損傷の初期段階などを高感度に非破壊検出できる可能性を秘めています。

私たちは、材料が透明でない限りその内部を直接目で見ることができません。しかし超音波を使えば、見えないものも見えるようになります。もし材料内部に傷があれば、そこで超音波が反射します。そのため、傷からの反射波を測定することで、我々は傷の存在を認識することができます。つまり、材料を壊さずに内部を“診る”ことができるのです。これが超音波を用いた非破壊評価の基本原理です。非破壊評価は我々人類の安全を守るうえで必要不可欠な技術であり、評価精度のさらなる向上に向けて今なお世界中で研究がなされています。

現在、非破壊評価の中でも特に問題にされているのが“傷は無いが材料が劣化している状態”の評価です。その代表例として、疲労が挙げられます。人間と同じく材料にも疲労がたまります。たとえ小さな力でもそれを繰り返し受け続けると材料に疲労がたまり、やがて微小な傷が発生します。そして、それが大きな傷へと成長し、最終的に破壊に至ります。高度経済成長期に建設された発電所などの大形構造物には薄板材料が広く使用されており、それらの高経年化に伴う疲労状態の非破壊評価が重要とされています。特に、現在の技術では大きな傷(超音波を反射させる傷)が発生してからでないとそれを検知できないため、微小な傷が発生した段階、さらにはその前段階で疲労状態を精度よく評価できる技術の確立が課題とされています。

そこで、研究グループは超音波の非線形現象である“三波相互作用”に着目しました。これは、板の中で二つの超音波を交差させると三つ目の小さな超音波が発生する現象です。研究グループは数値シミュレーションや理論計算を行い、三波相互作用で生じる三つ目の超音波の発生メカニズムの解明に成功しました。この三つ目の超音波は材料特性の情報を豊富に含むため、この波を測定することで疲労の初期段階(大きな傷が発生する前段階)を感度良く評価できるのでないかと期待されています。

研究チームは、今後実験的検証を行い、最終的に三波相互作用を用いた新しい薄板材料の非破壊評価法を確立したいと考えています。これにより従来は検知できなかった材料のほんのわずかな損傷でさえも感度良く評価できるようになり、発電所や飛行機といった社会的に重要な構造物の安全性・信頼性の向上、つまり社会の安全性向上につながると期待されます。

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本研究は、JSPS科研費JP17K14557の助成によって実施されたものです。

<論文情報>

Y. Ishii, K. Hiraoka, and T. Adachi, “Finite-element analysis of non-collinear mixing of two lowest-order antisymmetric Rayleigh–Lamb waves,” Journal of the Acoustical Society of America Vol. 144, No. 1 (2018) pp. 53–68 (DOI: 10.1121/1.5044422).

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