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「遺伝子改変ゼブラフィッシュを用いて光刺激が体内時計を形成する仕組みを解明」

体内時計の障害が行動量を低下させ、疾患の要因となる可能性が明らかに

Tokyo Medical and Dental University

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IMAGE: (?) Total locomotor activity of WT, zPer2-/- zCry1a-/-, and zPer2-/- zCry1a-/- zCry2a-/- zebrafish was evaluated by measuring their moving distance. (?)Luminescent traces from individual wild type and zPer2-/- zCry1a-/- zCry2a-/- cultured... view more 

Credit: Department of Developmental and Regenerative Biology,TMDU

東京医科歯科大学難治疾患研究所発生再生生物学分野の仁科博史教授、平山順准教授(現公立小松大学教授)、ALIFU Yikelamu 大学院生の研究グループは、同教養部生物学教室の服部淳彦教授、同分子細胞機能学の中浜健一准教授、 名古屋市立大学大学院薬学研究科の粂和彦教授、東邦大学医学部の高松研教授、北里大学理学部の高松信彦教授、国立成育医療研究センターの東範行眼科診療部長、仁科幸子眼科医長、山梨大学大学院医学工学総合研究部の川原敦雄教授との共同研究で、光刺激によって体内時計が形成される仕組みを明らかにしました。この研究は、文部科学省科学研究費補助金、公益財団法人三菱財団などの支援のもとで行われたもので、その研究成果は、国際科学誌 Scientific Reports に、2019 年 1 月 17 日午前 10 時(英国時間)にオンライン版で発表されます。

【研究の背景】

体内時計*1は多様な生理機能に24時間の周期変動を作り出す装置です。「光を利用し自然界の昼夜の変化に対し体内環境を最適化する」という重要な役割を担っています。体内時計は、生物個体の細胞に存在する遺伝子発現のネガティブフィードバックループ(細胞時計*2)が基本単位です。体内時計の形成には、光刺激により複数の細胞時計が同じ時刻に同調することが必須です。しかしながら、光刺激による体内時計の形成の分子機構はわかっていませんでした。本研究チームは、ゼブラフィッシュの光誘導性の時計制御分子*3 である zPer2,zCry1a, zCry2a に注目し、これらを機能阻害したゼブラフィッシュを作出・解析しました。

【研究成果の概要】

我々は、分子生物学的な手法により、光誘導性の時計制御分子 zPer2, zCry1a, zCry2a をコードする遺伝子を破壊したゼブラフィッシュ(遺伝子改変ゼブラフィッシュ)を作出しました。その結果、野生型ゼブラフィッシュと比較して、遺伝子改変ゼブラフィッシュでは行動量が低下することを見出しました(A)。遺伝子改変ゼブラフィッシュでは、エネルギー代謝を調節する遺伝子群の発現パターンが変化し、エネルギーの源である ATP 量が減少することを明らかにしました。また、行動の日周変動を解析した結果、遺伝子改変個体では、光刺激によ

る体内時計の形成が失われていることを見出しました。この原因を解明するために、ゼブラフィッシュ胚由来の培養細胞を樹立し、レポーター遺伝子を導入し、細胞時計を可視化しました。その結果、野生型細胞では、異なる時刻を示した各細胞時計が光照射により同じ時刻に同調しました。しかしながら、遺伝子改変細胞では、光照射によっても異なる時刻のままで同調しませんでした(B)。以上の結果は、光誘導性の時計制御分子が、1)エネルギー代謝を通じて行動量を制御すること、2)個体内の個々の細胞時計を同調させ体内時計を形成させることを示唆しています。

【研究成果の意義】

本研究により、これまで不明であった細胞時計の光同調機構が分子レベルで明らかになりました。また、光誘導性の時計制御分子がエネルギー代謝を通じて行動量を制御することを見出しました。本研究の成果は、体内時計障害を原因とする睡眠障害などの疾患の病因解明に貢献することが期待されます。

【用語の解説】

*1 体内時計
個体のリズムを作り出す時計。行動、睡眠、代謝など多様な生理機能を制御する。

*2 細胞時計

細胞のリズムを作り出す時計。細胞時計は、CLOCK、BMAL、CRY、PER の主要な時計制御分子から構成される。CLOCK と BMAL の二量体タンパク質(CLOCK:BMAL)は、Cry や Per 遺伝子の転写を活性化する。産生されたCRYタンパク質とPERタンパク質は、CLOCK:BMALの転写能を抑制する。その結果、遺伝子の転写・翻訳のネガティブフィードバックループが形成される。この周期は約 24 時間となる。個体内の複数の細胞時計が同じ時刻に同調することで、体内時計が形成される。

*3 光誘導性の時計制御分子:
光によって遺伝子の転写が誘導される時計制御分子。ゼブラフィッシュでは、zPER2、zCRY1a、zCRY2a は光誘導性の時計制御分子である。

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