Public Release: 

132億年前の宇宙に存在した大量の塵の観測に成功!

~宇宙初期の星形成史をさかのぼる~

National Institutes of Natural Sciences

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IMAGE: アルマ望遠鏡がとらえた塵が放つ光を赤色、酸素が放つ光を緑色、ハッブル宇宙望遠鏡がとらえた若い星が放つ光を青色に割りあてて表現しています。... view more 

Credit: Credit: ALMA (ESO/NAOJ/NRAO), NASA/ESA Hubble Space Telescope, Tamura et al.

名古屋大学大学院理学研究科の田村陽一准教授、竹内努准教授、東京大学の馬渡健研究員、大阪産業大学の橋本拓也研究員、井上昭雄准教授が率いる研究チームは、アルマ望遠鏡を使い、地球から132億光年離れた銀河に大量の塵と酸素を発見しました。塵が見つかった銀河としては、観測史上2番目に遠い記録です。

138億年前の宇宙誕生直後には、宇宙には水素とヘリウム、微量のリチウムしか存在しませんでした。その後、これらのガスから星が生まれ、その星の中で核融合反応が進むことで酸素や炭素、また、塵の原料になる元素が生み出され、星が一生を終えるときに、これらの元素が宇宙にまき散らされたと考えられています。すなわち、大量の塵の検出は、それよりも前の時代に多くの星が生まれ、そして死んでいったことを示します。

アルマ望遠鏡の観測により、この銀河に含まれる塵の総量は太陽質量の400万倍に及ぶことがわかりました。つまり、宇宙誕生から6億年の間に大量の星の生死が繰り返されたことになります。これまでに理論的予測を超える量の塵が宇宙の初期に存在することが知られていましたが、今回の発見はその謎をさらに深めることになりました。

今回の観測とハッブル宇宙望遠鏡等による観測結果を合わせたところ、この銀河は宇宙誕生から3億年が経過した頃に生まれ、6億年が経過した頃に再度活発な星形成活動を起こしていることが明らかになりました。この成果は、私たちのまわりにある元素がいつどのように作られたのかという現代天文学の大きなテーマに迫るものといえます。

138億年の歴史を持つ宇宙の中で、最初の星や銀河はいつどのように生まれたか、また、私たちのまわりにある元素がどのようにして作られたかは、現代天文学の最も基本的な謎のひとつです。人類はタイムマシンを持っていませんが、広大にひろがる宇宙空間のより遠くを観測することで、より昔の宇宙を調べることができます。それは、遠くの天体からの光が地球に届くまでに長い時間がかかるため、地球でいま観測することのできる光は遠い昔に天体を出発したものになります。天文学者たちは、さまざまな高性能望遠鏡を用いて遠方天体を観測し、宇宙の歴史を紐解こうとしています。

ビッグバンで宇宙が生まれた直後、この宇宙に存在する元素は水素とヘリウム、そして、ごくわずかのリチウムだけでした。その後、宇宙に広がるガスが重力によって集まることで星が生まれ、その星の中で核融合反応が起きることで水素からヘリウム、炭素、酸素などの重い元素が次第に作られてきました。そして星が一生を終えて爆発するときに、さまざまな元素が宇宙にまき散らされます。こうした過程が繰り返されることによって、宇宙には徐々に重い元素が蓄積されていきます。すなわち、遠方宇宙における重い元素の存在量を調べることは、宇宙初期の星の形成史を解き明かすことにつながるのです。

こうした背景のもとで、本学大学院理学研究科の田村陽一准教授、竹内努准教授、東京大学の馬渡健研究員、大阪産業大学の橋本拓也研究員、井上昭雄准教授らの研究チームは、南米チリにあるアルマ望遠鏡を使ってMACS0416_Y1と呼ばれる銀河を観測しました。この銀河はNASAのハッブル宇宙望遠鏡による観測で発見されたもので、地球から見るとオリオン座の隣にあるエリダヌス座の位置する方向、132億光年の距離に位置しています。つまり、いま私たちが見ているのは、この銀河の132億年前の姿、言い換えれば、宇宙誕生から6億年後の姿に相当します。ハッブル宇宙望遠鏡は、この銀河に含まれる星が放つ光をとらえましたが、研究チームは、この銀河に含まれる大量の塵や酸素が放つ光をアルマ望遠鏡でとらえることに成功しました [1] 。塵と酸素が検出された銀河としては、観測史上2番目に遠い銀河 [2] です。研究チームが観測結果から見積もったところ、太陽の400万倍という大量の塵がこの銀河に存在していることがわかりました。

MACS0416_Y1に大量の塵と酸素が検出されたことは、宇宙誕生から6億年という比較的短い時間に、この銀河ですでに多くの星の生死が何度も繰り返されたことを示しています。宇宙誕生後10億年未満の時代の銀河に理論的予想を大きく超える量の塵が存在するという問題は、これまでも指摘されてきましたが、今回の発見によってより早期の宇宙でも大量の塵が存在することが確実になりました。これは、問題をより大きくする結果と言えます。

では、この銀河の星形成史はどのような経緯をたどったのでしょうか。アルマ望遠鏡による電波観測で求められた塵の量と、ハッブル宇宙望遠鏡やスピッツァー宇宙望遠鏡などによる赤外線強度の測定から推定される星の性質および総量をうまく説明できる星形成モデルを構築することに、研究チームは成功しました。生まれて3億年程度の星と、今まさに生まれたばかりの星の2つの世代がこの銀河に共存していれば、観測結果とうまく整合するのです。つまり、この銀河では、ビッグバン後およそ3億年が経過した頃に最初の活発な星形成が進み、その活動がいったん落ち着いたあと、ビッグバン後およそ6億年の頃に再び活発な星形成活動が起き始めている、と言えます。今回観測したのは、この2度目の星形成活動のはじまりのあたりであると研究チームは考えています。

研究チーム

この研究を行った研究チームのメンバーは、以下の通りです。

田村陽一(名古屋大学), 馬渡健(大阪産業大学/東京大学), 橋本拓也(大阪産業大学/国立天文台), 井上昭雄(大阪産業大学), Erik Zackrisson(ウプサラ大学), Lise Christensen(コペンハーゲン大学), Christian Binggeli(コペンハーゲン大学), 松田有一(国立天文台/総合研究大学院大学), 松尾宏(国立天文台/総合研究大学院大学), 竹内努(名古屋大学), 浅野良輔(名古屋大学), 須永夏帆(名古屋大学), 清水一紘(大阪大学), 岡本崇(北海道大学), 吉田直紀(東京大学), Minju M. Lee(名古屋大学/国立天文台), 澁谷隆俊(北見工業大学), 谷口義明(放送大学), 梅畑豪紀(放送大学/理化学研究所/東京大学), 廿日出文洋(東京大学), 河野孝太郎(東京大学), 太田一陽(ケンブリッジ大学/京都大学)

[1] 今回観測した塵や酸素が放つ光は、もともとは赤外線でした。ところが、天体から放たれた赤外線が進むうちに宇宙全体が膨張したため、赤外線の波長が伸び、サブミリ波となって地球に届きました。アルマ望遠鏡はサブミリ波を高い感度で観測することができるため、非常に遠方の銀河に含まれる塵や酸素からの光を検出することができました。

[2] 塵と酸素が検出された銀河で観測史上最も遠いものはアルマ望遠鏡で観測されたA2744_YD4(参考:2017年3月8日付プレスリリース「アルマ望遠鏡、132億光年先の銀河に酸素と塵を発見 ―最遠方記録を更新し、銀河誕生時代に迫る」)ですが、今回観測されたMACS0416_Y1との差は600万光年程度とごくわずかです。

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