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ヒトiPS細胞から色素前駆細胞の作成に世界で初めて成功

― タイムリーに必要量の色素細胞を容易に得られ、色素異常などの難病や皮膚がんの研究に有用 ―

Kobe University

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IMAGE: ヒト色素細胞を安定して作製できる前駆細胞 view more 

Credit: Kobe University

神戸大学大学院医学研究科内科系講座皮膚科学分野(錦織 千佳子 教授、国定 充 講師、保坂 千恵子 研究員ら)と、科学技術イノベーション研究科、藤田医科大学の研究グループは、ヒトiPS細胞から色素細胞の前駆細胞を作成することに世界で初めて成功しました。今後、メラノサイト発生のさらなる解明や色素細胞由来の疾患についての研究の発展が期待されます。

この研究成果は、3月6日に、Pigment cell & Melanoma Research にオンライン掲載されました。 

【ポイント】

• 世界で初めて、ヒトiPS細胞から色素細胞の前駆細胞を培養レベルで作成する事に成功した。

• この色素細胞の前駆細胞は培養皿の中で増やすことや凍結保存も可能であり、特定の試薬を添加することによりわずか1週間で成熟した色素細胞に分化させて実験に使う事ができる。

• 色素細胞の前駆細胞を用いることにより、これまで困難であった培養色素細胞を用いた研究を比較的安価に簡便に実施する事が可能となり、色素異常症※1やメラノーマ (=悪性黒色腫:皮膚がんの一種)※2の研究に役立つことが期待される。

【研究の背景】

色素細胞(メラノサイト)はメラニンという色素を作り出し、皮膚の色を司る重要な細胞です。その機能異常は白皮症のような遺伝性の疾病から、加齢に伴う老人性色素班、いわゆる「しみ」まで幅広く関与しますし、色素細胞が癌化すると悪性黒色腫(メラノーマ)という皮膚がんの一種になります。また、皮膚の色調や整容的要素は、時代を超えて常に人々の関心事です。これらのことから、色素細胞に関する多くの研究が成されています。研究を進める上で、安定した色素細胞の供給が必要とされますが、ヒト表皮から色素細胞を単離することは高度な技術を要し、特に成人の場合は色素細胞の培養維持(培養皿の中で増やすこと)が困難なことが知られており、これは色素異常症患者や健常者由来の色素細胞を用いた研究の障壁となり、疾患の解明を妨げる原因となります。

iPS細胞は成人の皮膚、血液などから樹立ができ、そこから種々の細胞へ分化可能を持つため、今まで取得できなかった細胞を得ることができ、それらを用いた治療や病態の解明など臨床への応用が期待されています。

【研究の内容】

ヒトiPS細胞から色素細胞に分化させる方法は既にいくつか報告されています。既報告のプロトコールはヒトiPS細胞から色素細胞までの分化過程にしたがっていくつかのシグナル活性化因子(試薬)を順次培地へ添加していきますが、最終的な研究材料となる色素細胞を実験計画に合せて丁度良いタイミングで分化させるのに多くの労力と研究費を費やします。われわれは、メラノサイトへ分化させる際に加える刺激因子を途中で一旦中止することで、色素細胞の元となる色素細胞の前駆細胞を得ることに成功しました(図1)。

この細胞は培養皿のなかで自己複製能をもつため増やすことが可能で、一旦凍結保存しておくこともできます。解凍後に再び色素細胞への分化誘導因子を投与することで、わずか1週間で色素細胞へ分化させることもできました。つまり、この細胞を使う事によって、いつでも欲しいタイミングで欲しいだけの量の色素細胞を作成する事ができます。また、本研究の中で、色素細胞の前駆細胞が分化せず自己複製が維持されるしくみと、成熟した色素細胞へと分化してゆくしくみが明らかになりました。

【今後の展開】

本研究成果によって、色素異常症患者や健常者の色素細胞を計画的に得ることが可能となるため、これらを比較することによる原因追求や治療方法の発見などに役立つことが期待されます。また、悪性黒色腫に関する研究や、色素異常症や加齢等に伴う皮膚の色調変化に関する研究、さらには前駆細胞を用いて白斑などの治療にも応用できる可能性があります。

【用語解説】

※1 色素異常症:

白斑、白皮症、母斑、黒皮症など。遺伝性のものと非遺伝性のものがある。前者の多くは根本的な治療法がないものが多く、眼皮膚白皮症など国の指定難病となっているものもある。

※2 悪性黒色腫 (メラノーマ):

皮膚がんの一種。色素細胞またはほくろの細胞が悪性化した腫瘍と考えられている。我が国では人口10万人あたり年間1~2人程度が発症し、死亡数は年間600〜700人に上る。世界では年間約13万人が新たに発症するといわれ、近年急速に増加している。

【謝辞】

本研究は、日本学術振興会(JSPS)科学研究費補助金、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)難治性疾患実用化研究事業の支援を受けて行いました。

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