News Release 

一個の分子を通る熱流を測る

Okinawa Institute of Science and Technology (OIST) Graduate University

 沖縄科学技術大学院大学(OIST)の研究者らを含む国際研究者チームは、数年にわたって2つの金の電極間に接合された単一分子を通る熱伝達の問題に取り組んできた結果、ついにその測定と理論化に成功しました。 この成果は2019年7月xx日付のNature誌に掲載されました。

 単一分子を流れる電子については、2000年頃初めて計測されました。分子がどのように発光するかなど、分子のその他の特性についてもこれまで研究されてきています。しかしながら、熱輸送や伝導性を分子のレベルで定量化するには高い分解能の測定が必要とされるため、これまで未解明の課題となっていました。

 この難易度の高い課題を解決するために、本国際共同研究チームは実験と理論の両面から研究を進めました。

 ミシガン大学の研究者らは、走査型熱顕微鏡と呼ばれる装置を開発しました。一個の炭化水素分子を金でコーティングされたプローブと金の表面の間に配置することができる装置です。まずは金のプローブを熱し、その後、分子がプローブの先と基板の層との間で結合を形成するよう、プローブを低温の金の基板の上に掲げました。温度差により、熱は分子を通じて、高温の金プローブから低温の金基板に伝導します。使用された炭化水素分子は、韓国の国民大学の研究者らによって合成されました。

 熱伝導は、私たちにとって馴染みがある プロセスですが、熱はさまざまな方法で運ばれます。 この研究では、炭化水素分子中の原子の振動によって運ばれる熱を、走査型熱顕微鏡を用いて検出しました。

 OISTの量子輸送と電子状態理論ユニットを率いるファビアン・パウリー准教授と、同ユニットの博士課程学生のJan Kl�ckner さんが本論文の理論を構築しました。

 各測定にかかる時間はわずか数秒ですが、分子一個の熱伝導率を決定するには何度も顕微鏡実験を重ねて平均を出します

 研究者らは、長さの異なる炭化水素分子を使用しました。パウリー准教授のグループは今回の共同研究に先立ち、単一分子接合の熱伝導率の値についての予測を行っていました。この予測が今回実験を担当した研究者に測定に必要な分解能に関する重要な知見を提供したのです。

 「分子レベルでの熱輸送は、分子の長さに依存しないことがわかったので、今後は熱輸送をどのように増強または低減できるかを解明していく必要があります。私たちが将来達成したいと考えているのは、熱の流れを制御する方法を分子レベルでの設計によって実現することです。」と、パウリー准教授は語ります。

 パウリー准教授によると、熱がどのくらい物質を伝わるかを制御するには、分子レベルでの熱の流れを詳細に理解する必要があります。「例えば、熱を電気エネルギーに変換するために使用できる熱電装置の効率を評価するには、熱伝導率を知る必要があります。」

 この研究は科学の異なる専門分野にわたっていることが、この論文の筆者の構成からもわかります。筆頭著者であるミシガン大学のPramod Reddy教授とEdgar Meyhofer教授は、メカニカルエンジニアであり、その他の責任著者である、国民大学のSung-Yeon Jang准教授は化学者であり、OISTのファビアン・パウリー准教授は、理論物理学者です。

 今回、この国際研究チームが開発した実験及び理論的手法は、熱が分子スケールでどのように流れるかを研究する道を切り拓きました。研究チームは将来的に、新しい分子構造を設計することによって、熱の流れを制御する方法を見つけたいと考えています。

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