News Release 

膀胱がん罹患犬の尿から膀胱がん組織の再現に成功

オーダーメイド獣医療の実現に向けた第一歩

Tokyo University of Agriculture and Technology

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IMAGE: Establishment of urine-derived bladder cancer organoid culture method view more 

Credit: Tatsuya Usui, DVM, PhD

国立大学法人東京農工大学大学院農学研究院動物生命科学部門の臼井達哉特任講師らは、膀胱がん罹患犬の尿に含まれる微量ながん幹細胞から生体内の膀胱がん組織を培養ディッシュ上で再現する新たな実験モデルを確立しました。本成果は、イヌの膀胱がんの最適治療薬の選択や、早期診断マーカーの開発に加えて、ヒトの浸潤性膀胱がんの新規治療薬開発や病態メカニズムの解明につながることが期待されます。

本研究成果は、「Cancer Science(7月23日付)」に掲載されました。

論文名:Establishment of a novel experimental model for muscle‐invasive bladder cancer by using dog bladder cancer organoid culture URL:https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/cas.14118

現状  

近年、ペットフードの改善や獣医療の発展によってイヌをはじめとするペットの寿命が延びています。その結果、高齢化が進み、がんに罹患するイヌも増加しています。そのなかでも膀胱がんは、悪性度が非常に高く、発症率が増加し続けています。イヌの膀胱がん治療には、外科手術、非ステロイド性の抗炎症剤および化学療法が用いられていますが、ほとんどの罹患犬は治療の甲斐なく早期に死亡するため、新規治療法の確立や診断マーカーの探索が課題となっています。また、イヌの膀胱がんはヒトの浸潤性膀胱がんの病態に類似することから、自然発症浸潤性膀胱がんの実験モデルとして期待されていますが、利用可能な細胞株が少ないためにほとんど活用されていません。

 最近、がん組織を用いた三次元培養(オルガノイド培養)法(注1)がオーダーメイド医療にとって有用なツールとなることが期待されています。この方法で作製される「がんオルガノイド」は、生体内の組織やその特性をより忠実に再現していると考えられているためです。一方、イヌの膀胱がんは診断時に末期的な症状を示すことが多く、手術やバイオプシー(生体組織診断)による組織の採取が困難なことから、既存のオルガノイド培養法の実施は不可能でした。

研究体制  

本研究は共同研究として東京農工大学(モハメド・エルバダウィー研究員、佐々木一昭准教授、金田正弘准教授、打出毅特任教授、福島隆治教授、渋谷淳教授、吉田敏則准教授、水谷哲也教授、大松勉准教授)、岐阜大学(森崇教授)、山口大学(恒富亮一講師、硲彰一教授)、東京大学(中川貴之准教授)、大阪府立大学(野口俊助准教授)、北里大学(岩井聡美准教授、山脇英之教授)、およびイスクラ産業(篠原祐太氏)らの協力の下に実施されました。

研究成果  

本研究チームは、膀胱がん罹患犬の尿中に含まれる微量ながん幹細胞(注2)に着目し、三次元培養法を用いて尿サンプル由来がんオルガノイドの作製を試みました。その結果、17検体中12検体で尿サンプル由来イヌ膀胱がんオルガノイドの作製に成功しました(図)。作製したがんオルガノイドは、尿路上皮細胞マーカーであるCK7, CK20およびUPK3A陽性細胞を含み、イヌの尿路上皮がんに類似する上皮構造が観察されました。免疫不全マウスへの移植によって、生体内においても作製したがんオルガノイドが腫瘍形成能を有することが示されました。さらに、膀胱がんオルガノイドへのビンブラスチン、シスプラチンなどの抗がん剤の単剤あるいは併用処置による感受性が個体間で異なることが分かりました。また、RNAシークエンス解析によって、イヌ膀胱がんオルガノイドがヒトの浸潤性膀胱がんと同じくbasal cellタイプであることや、MMP28やCTSEなどの膀胱がんオルガノイド特異的に上昇する複数の新規遺伝子を同定しました。  

今後の展開

 本研究チームが開発した尿サンプルを用いた膀胱がんオルガノイドの機能解析が進めば、イヌおよびヒトの膀胱がんの悪性化の仕組みの解明に役立つことが期待されます。また、各個体で最も有効な治療薬の組み合わせを提示することも可能になると考えています。

注1)オルガノイド培養法

組織中の幹細胞を用いて、培養ディッシュ上で三次元の組織構造を再現することができる培養法。がん幹細胞を効率的に増殖させることもできる。

注2)がん幹細胞

がん組織中にわずかに存在する細胞であるが、がんの発生、再発、転移、抗がん剤や治療の抵抗性に大きく関わることが知られている。

◆研究に関する問い合わせ◆


東京農工大学大学院農学研究院 動物生命科学部門 特任講師

臼井 達哉(うすい たつや)

TEL/FAX:042-367-5770

E-mail: fu7085(ここに@を入れてください)go.tuat.ac.jp

研究室ホームページ: http://vet-pharmacol.com/  

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