News Release 

新たなペロブスカイト材料が、広く普及したシリコンに代わる太陽電池素材へ

Okinawa Institute of Science and Technology (OIST) Graduate University

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IMAGE: CsPbI3(赤で示された中央の層)から隣接する層への電子の損失を最小限に抑えるため、すべての層のエネルギーレベル(グラフ上のeV)が似たような値であることが重要。... view more 

Credit: OIST

太陽電池の素材として現在市場で圧倒的に普及しているのはシリコンです。シリコンは安定性があり、価格も安く、太陽エネルギーを電気へ変換する変換効率も優れています。シリコンにとって代わるための新素材は、これらの点においてシリコンよりもさらに優れてかつ低コストでなければなりません。上海交通大学、スイス連邦工科大学ローザンヌ校(EPFLローザンヌ)、沖縄科学技術大学院大学(OIST)の研究者らによる共同研究で、現在の市場における太陽電池素材のシリコン材料の一人勝ちに挑むべく、効率的に電気を生み出し、安定性のある新素材を発見しました。

共同研究チームは2019年8月9日に掲載された学術誌Scienceにおいて、CsPbI3という物質が、いかに高い変換効率に保ちつつ、新たな物質相において安定性を保てるかを示しました。CsPbI3は、無機ペロブスカイトの一種で、高効率で低コストであるため、太陽電池開発の世界で人気を集めている材料です。ただしこの材料を安定させることは困難であったので、今回の研究で得られた物質相の特性は、注目に値します。

「CsPbI3が業界をリードする素材と競合できることを示すことができたことに満足しています。この予備的研究結果を踏まえ、私たちは今、材料の安定性を向上させ、商業的見通しを立てるために取り組んでいます。」と、本研究において表面科学領域でリーダーを担うヤビン・チー教授(OISTエネルギー材料と表面科学ユニット)は語っています。

エネルギーレベル・アラインメント

CsPbI3はこれまで、アルファ相又は黒色のためダーク相としても知られる結晶構造について研究されることが多かった材料です。このダーク相は、太陽光を吸収するのに特に優れています。ただし残念なことに、この構造は不安定なので、黄色味を帯びた材料に急速に劣化してしまい、日光を吸収する能力が落ちてしまいます。

本研究では、あまり知られていないベータ相における可能性を探りました。ベータ相は、アルファ相よりも安定した構造を持っています。ただし、より安定はしているものの、アルファ相と比較すると電力変換効率が低いという難点がありました。

この効率の低さは、薄膜太陽電池によく生じてしまうひびによる影響が原因の一部となっています。ひびは、太陽電池の隣接する層への電子損失を引き起こし、そうなると、電子はもはや電気として流れることができません。研究チームはこれらのひびを修復するため、ヨウ化コリン溶液で材料処理を施しました。この処理によってエネルギーレベル・アラインメントとして知られている太陽電池の層間の界面を最適化することができたのです。

「電子というものは、電子のポテンシャルエネルギーが低い物質に向かって自然に流れるため、隣接する層のエネルギーレベルがCsPbI3と同じであることが大事です。そうすれば層の間の相乗効果により、失われる電子が減り、より多くの電気が発生します。」と、共著者である大野ルイス勝也博士は述べています。

本研究はOISTの技術開発イノベーションセンターの支援を受けて行われました。研究チームは、紫外線光電子分光法を使用し、CsPbI3と隣接する層との間のエネルギーレベル・アライメントを調べました。収集されたデータでは、電子がどのようにしてさまざまな層を自由に移動し、電気を生成できるかを示しました。

その結果、ヨウ化コリンで処理した後は、層の間のエネルギーレベル・アラインメントが良好になったため、隣接層への電子の損失が少ないことがわかりました。自然に発生するひびを修復することにより、この処理は15%から18%への変換効率の増加をもたらしました。

この技術的な前進は小さなものに見えるかもしれませんが、この技術はCsPbI3という材料をお墨付きの効率領域に引き上げ、ライバルである太陽電池材料に対し、競争力のある価値をもたらします。ただ、この研究初期段階の結果は有望なものではあるものの、無機ペロブスカイトの材料は、まだ遅れをとっています。CsPbI3が真にシリコンと競合できるようにするため、チームは次段階として、シリコンがこれまで優位性を保っている3つの要因、すなわち安定性、コスト、効率性について更なる取組をする予定です。

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