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地理情報システムと環境DNAの組み合わせで絶滅危惧種ヤマトサンショウウオの新規生息地を発見!

Kobe University

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IMAGE: 図1 ヤマトサンショウウオ(Hynobius vandenburghi)とその卵嚢(右下)。 view more 

Credit: 常川光樹氏(岐阜高校3年生:自然科学部生物班部長)

坂井雄祐氏(現東京大学医学部)をはじめとする岐阜高校自然科学部生物班の高校生(研究当時)と顧問である矢追雄一教諭、高木雅紀教諭(現大垣北高校教諭)、神戸大学大学院人間発達環境学研究科の源利文准教授、冨田勢大学院生(研究当時)、岐阜大学地域科学部の向井貴彦准教授、世界淡水魚園水族館アクア・トトぎふの田上正隆学芸員からなる研究グループは、地理情報システム(GIS)を用いた生息適地の絞り込みと環境DNA分析の組み合わせによって、岐阜県内に3箇所しか知られていなかったヤマトサンショウウオ(旧分類名:カスミサンショウウオ)の新規生息地を発見することに成功し、その成果を国際学術誌「Environmental DNA」で発表しました。執筆当時高校生であった坂井氏が筆頭著者として主に論文を執筆しています。この手法は他の絶滅危惧種にも応用可能で、見つけることが難しい希少種の生息地を知るための新たな手法として確立されることが期待されます。

この研究成果は、9月6日に、国際科学誌「Environmental DNA」に掲載される予定です。

ポイント

     地理情報システム(GIS)による生息候補地の絞り込みと、環境DNA分析による生息の確認の組み合わせによって、絶滅危惧種ヤマトサンショウウオの新規生息地を発見した。

     岐阜県はヤマトサンショウウオの生息域の北東限であり、これまで3箇所しか生息地が知られていなかったが、今回4箇所目を発見した。

     野外調査からDNA実験までの一連の研究は高校生によって主体的に行われ、論文執筆を主導した筆頭著者も高校生である。

     GISと環境DNA分析の組み合わせは他の希少種にも適用可能であり、希少種保全のための新たなツールとしてより発展することが期待される。

研究の背景:

小型サンショウウオ類であるHynobius属のサンショウウオは世界に約50種が報告され、約30種が日本の固有種とされています。ヤマトサンショウウオ(Hynobius vandenburghi:ごく最近までカスミサンショウウオとされていました)は近畿地方から東海地方にかけて分布しており、岐阜県はその分布の北東の端にあたります(図2)。岐阜県内におけるヤマトサンショウオの生息地はこれまで3箇所のみが知られていました。しかし、もっとも最近になって発見された岐阜県海津市の生息地はそれ以前に知られていた生息地からは離れており、他にも生息地があってもおかしくないと考えられました。岐阜高校の自然科学部生物班ではこれまでも13年にわたってヤマトサンショウウオ(旧カスミサンショウウオ)の研究を継続しており、今回2種類の比較的新しい科学的手法(地理情報システムと環境DNA分析)を組み合わせることで新規生息地を発見することを試みることにしました。

地理情報システム(GIS)は標高や周辺の土地利用といった各種の地理情報を重ね合わせることのできる手法です。これを用いることで、現在知られている生息地と似た環境にある生息地候補を探し出すことができます。また、環境DNA分析は水中のDNAを調べることで、そこにどのような生物が生息しているかを調べる手法です。つまり、地理情報システムを用いて生息候補地をしぼりこみ、そこで環境DNA分析を行うことで、新規生息地を簡便に発見できると考えました。

研究の内容

私たちは、岐阜県内のヤマトサンショウウオ生息地の周囲の緑地率、標高、斜度、斜面の方向を調べ、それと同様の生息地を地理情報システムを用いて探索しました。その結果、岐阜県岐阜市に3箇所、関市と海津市にそれぞれ1箇所の合計5箇所の生息候補地を絞り込むことができました。

次に、それぞれの生息候補地を訪れ、環境水を採取しました。ヤマトサンショウウオは森や林と水田などの境界付近の水たまりなどに産卵することが多いので、そのような場所を探し、採水を行いました。水の中からヤマトサンショウウオのDNAを検出する環境DNA分析を行った結果、岐阜市の1箇所、関市の1箇所、海津市の1箇所の環境水からヤマトサンショウウオのDNAが検出されました。

DNAが検出された地点で個体や卵嚢を探す調査を行ったところ、海津市のDNA検出地点で、1組の卵嚢を発見することができました(図3)。このことは、地理情報システムと環境DNAの組み合わせが希少種の新規生息地を探索する手段として有効であることを示しています。このような地理情報システムと環境DNA分析の組み合わせで希少種の新規生息地を発見するに至った例は世界的にも稀だと考えられます。

今回の研究では地理情報システムによる生息候補地の絞り込みや環境DNA分析を高校生自身が実施しました。このことは、これらの新しい科学的手法が専門家でなくても使えることを示しています。このような手法が発展することで、市民科学のツールとして用いることができるようになると考えられます。また、今回発表された論文は高校生(執筆当時)が筆頭著者として執筆を主導し、大学関係者がそのサポートを行いました。高校生が国際科学誌に論文を発表できたということは特筆に値します。

今後の展開

この研究の成果は、見つけるのが難しい希少種の新規生息地を発見するための手段として、地理情報システムと環境DNA分析の組み合わせが有効であることを示しています。今後は、このような手段を他の種にも適用することで、希少種の効果的な保全につながることが期待されます。また、専門家でなくても調査が可能である環境DNA分析の利点を生かして、市民に保全活動に直接的に参加してもらうことにもつながると考えられます。

 岐阜高校の自然科学部生物班では、行政機関、大学、アクア・トトぎふなどと連携し、ヤマトサンショウウオの保全活動を継続しており、個体の保護、生息地の環境整備、生息域外保全などに取り組んでいます。今回特定された生息地以外にもヤマトサンショウウオがひっそりと生息している場所があると考えています。今後も、新たな生息地を探索すると共に、様々な野生生物と人間が共生し、持続可能な発展を遂げていけるよう、その他の希少生物も含めて、岐阜県の生物多様性の保全に努めていきたいと考えています。

論文情報 ・タイトル “Discovery of an unrecorded population of Yamato salamander (Hynobius vandenburghi) by GIS and eDNA analysis”

・著者  坂井雄祐(岐阜高校自然科学部生物班:研究当時)  日下部綾音(岐阜高校自然科学部生物班:研究当時)  土田康太(岐阜高校自然科学部生物班:研究当時) 都竹優花(岐阜高校自然科学部生物班:研究当時) 岡田翔吾(岐阜高校自然科学部生物班:研究当時) 北村拓斗(岐阜高校自然科学部生物班:研究当時) 冨田勢(神戸大学大学院人間発達環境学研究科・大学院生) 向井貴彦(岐阜大学地域科学部・准教授) 田上正隆(世界淡水魚園水族館アクア・トトぎふ・学芸員) 高木雅紀(岐阜高校・教諭:研究当時) 矢追雄一(岐阜高校・教諭) 源利文(神戸大学大学院人間発達環境学研究科・准教授)

・掲載誌 Environmental DNA(今年創刊された環境DNA研究の専門誌)

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