News Release 

蛍光体材料の発光強度と結晶構造の関係が明らかに

白色LED用蛍光体材料開発の材料設計に活用

Toyohashi University of Technology

IMAGE

IMAGE: b-方向に4.11倍の非整数倍周期を有し、MO4の傾きの違いから、T,S,Uが繰り返す周期構造になっている。 view more 

Credit: COPYRIGHT (C) TOYOHASHI UNIVERSITY OF TECHNOLOGY. ALL RIGHTS RESERVED.

豊橋技術科学大学、名古屋工業大学、物質・材料機構の研究チームは、シリケート(Ca2SiO4)系材料にP2O5とEu2O3を添加した赤色蛍光体材料を、様々な熱処理温度で結晶構造を変化させ、その違いにより発光強度が変化するメカニズムを解明しました。

蛍光体材料は、LED照明のほかにも、車載用、プロジェクター用など、身の回り品に多く使用されています。より明るく、効率のよい蛍光体材料を求めて、多くの研究者が多様な面から開発を進めています。より明るい蛍光体材料設計のためには、発光強度と結晶構造に関する知見が重要です。今回、熱処理とPイオンやEu添加により生じた、材料の結晶構造の変化を原子レベルで詳しく解析することに成功し、発光強度との関係を明確にすることができました。

白色LEDは、この20年間で著しい発展を遂げ、市場規模は拡大傾向が続き、今や産業界をリードする分野です。蛍光体材料の用途は広く、照明のほかにも液晶TV・モニター向けバックライト、車載用などがあります。今後、ますます用途が多様化し、さらに省エネ、低コスト、高演色、長寿命化実現のために、新材料開発には多くの研究者らによる競争が進み、学会でも注目度の高い分野です。そのため、新規蛍光体材料開発において、その特性と発現メカニズムの解明は重要な知見となります。しかし、多くの蛍光体材料の開発は、より明るく、高効率の材料を求める一方で、メカニズム解明の詳細に関する論文は多くないのが現状です。

そこで、研究チームは、Ca2SiO4(シリケート)にPと賦活剤としてのEu3+を添加した赤色蛍光体を、熱処理温度を1200度~1500度と変えて合成しました。なぜなら、シリケートは熱により容易に結晶構造を変化させるからです。ここで、賦活剤とは、結晶に入ることにより、青から赤色までいろいろな発光色を発する元素(イオン)のことです。

研究の結果、熱処理温度により発光強度は変化し、結晶構造変化と密接な関係があることが分かりました。注目したのは、1500度で熱処理をした蛍光体材料の結晶構造が、セラミックス材料にはめずらしい不整合構造(Incommensurate:IC)に変化したことです。通常の結晶構造は、整数倍の周期ですが、IC相は非整数倍の変調を有する結晶構造です。IC相の形成により発光強度は低下しました。そこで、X線回折法と計算科学を駆使することにより、原子レベルで結晶構造を詳しく解析することに成功しました。解析の結果、b-方向に4.110倍の変調構造を有し、その構造はSiO4四面体の3種類(T,U,S)の傾きが存在すること、長い周期でみるとさらに2種類(T”,S”)の傾きの存在により、IC相を構成していることがわかりました。このような複雑なIC相が形成された理由は、SiO4四面体の一部にPが存在すること、Caの一部にEuが存在すること、さらに1500度の高温から急冷処理により形成されたと考えています。今回のような正確な結晶構造の解析により、より明るい発光強度を有する材料合成のためには、どの結晶サイトに賦活剤が入ればよいか?どういう結晶構造が好ましいのか?を知ることができ、新材料設計に今回の知見が活用できると思います。

<開発秘話>

シリケート母材にPを添加する蛍光体材料は、約5年前から研究を始めました。シリケートは熱処理温度で結晶構造を制御できるため、当初から結晶構造と発光特性の関係に着目していました。今回、チームリーダーの中野が、得られたXRDが今までの結果と一致しないため、名工大の福田教授にデータを見せたところ、IC相の可能性があり、XRDでもIC相を解析できるとアドバイスを受けました。非整数倍の周期をもつ結晶構造は、電子回折で中野が観察しておりましたが、定量的なデータを得るためには他の手段が必要でした。XRDの専門家である福田教授(名工大)のグループと、IC相の解析の第一人者である道上博士(NIMS)のグループの研究協力により、今回の精密な結晶構造解析の成功につながりました。

<今後の展望>

今回の知見は、蛍光体材料開発をする上で重要な知見であり、同分野の産業界でも役に立つと考えています。今後は、さらに新材料開発を進めながら正確な結晶構造解析を行い、物性と関連付けた新知見を広く公表していきたいと考えています。

###

<論文情報>

Hiromi Nakano, Shota Ando, Konatsu Kamimoto, Yuya Hiramatsu, Yuichi Michiue, Naoto Hirosaki and Koichiro Fukuda, “Incommensurately Modulated Crystal Structure and Photoluminescence Properties of Eu2O3- and P2O5-Doped Ca2SiO4 Phosphor”, (2020) Materials, 13, 58; doi:10.3390/ma13010058.

Disclaimer: AAAS and EurekAlert! are not responsible for the accuracy of news releases posted to EurekAlert! by contributing institutions or for the use of any information through the EurekAlert system.