News Release 

脳に薬剤を届けるナノカプセル送達技術を開発

Kumamoto University

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IMAGE: ヒト血液脳関門モデル細胞を透過するファージを集め、透過したファージが有するペプチドのアミノ酸配列を解析。... view more 

Credit: Professor Sumio Ohtsuki

熊本大学の研究者らは、脳の血液関門の透過を促進する環状ペプチドを開発しました。今回発見した環状ペプチドを表面に持つナノ粒子の中に医薬品を入れることによって、脳に様々な薬を届ける薬剤ナノカプセルの研究開発が可能となります。

脳の血管は他の臓器の血管とは異なり隙間がない構造をしており、薬が血液から脳へ移動することを妨げている血液脳関門という仕組みがあります。従来よく使われている薬剤は低分子医薬品のため血液脳関門を透過できますが、副作用などが出やすいことが課題です。このため、抗体やペプチド等のバイオ医薬品や遺伝子等の高分子医薬品が新薬として期待されていますが、高分子医薬品は血液脳関門を透過することができません。従って、高分子医薬品を脳に届けることができる技術は、脳で作用する中枢薬の開発を大きく進めることを可能にするものとして待望されています。

そこで熊本大学の研究チームは、様々な医薬品に応用可能な技術開発を目指して、ナノ粒子の血液脳関門透過を促進し脳へ送達ができる環状ペプチドの開発を行いました。目的の機能を持つペプチドの探索には、ファージと呼ばれるウイルスを使用する方法を用いました。様々なアミノ酸配列(109種類)の環状ペプチドを提示するファージ群(ファージライブラリ)の中から、ヒト血液脳関門モデル細胞を透過するファージを集め、透過したファージが有するペプチドのアミノ酸配列を解析しました。ファージの大きさは約1,000ナノメートルであり、バイオ医薬品よりも大きいことから、ファージの血液脳関門透過を促進する環状ペプチドはバイオ医薬品の透過も促進する能力を有することが期待されます。

解析の結果、2種類の新規環状ペプチドを発見しました。そのうちの1つの環状ペプチドはヒト血液脳関門モデル細胞だけではなく、サルとラット血液脳関門モデル細胞のファージの透過を促進しました。また、発見した環状ペプチドを提示するファージをマウス血液中に投与し、60分後の脳を解析した結果、脳内にファージが入っていることが観察されました。また、大きさが150ナノメートルの人工ナノ粒子であるリポソーム表面に発見した環状ペプチドを付加した修飾リポソームを作成しました。この修飾リポソームを同様にマウス血液中に投与した結果、60分後の脳にリポソームが検出されました。これらの結果から、発見した環状ペプチドによってファージやリポソームのナノ粒子の血液脳関門透過を促進し脳内に届けることが可能になるということを示しています。

研究を主導した大槻教授は次のようにコメントしています。

「リポソームは様々な物質を内包することが可能なナノカプセルです。発見した環状ペプチドで表面を修飾したリポソームを脳へ運ぶナノカプセルとして使用することによって、高分子医薬品を脳に届けることが可能になり、アルツハイマー病を含めた中枢・神経疾患に対する医薬品開発に大きく貢献することが期待されます。」

本研究成果は、科学ジャーナル「Journal of Controlled Release」に2020年3月2日に掲載されました。

[Source]

Yamaguchi, S., Ito, S., Masuda, T., Couraud, P.-O., & Ohtsuki, S. (2020). Novel cyclic peptides facilitating transcellular blood-brain barrier transport of macromolecules in vitro and in vivo. Journal of Controlled Release, 321, 744�755. doi:10.1016/j.jconrel.2020.03.001

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