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南極の湖沼周辺に生息する微生物の群集構造を解明

Toyohashi University of Technology (TUT)

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<概要>

豊橋技術科学大学 応用化学・生命工学系広瀬侑助教、新潟大学、海洋研究開発機構、国立極地研究所らの研究グループが、南極のラングホブデおよびスカルブスネス露岩域の湖沼周辺に生息する微生物の種類と組成(群集構造)を明らかにしました。湖沼の岸辺や水たまり等から採取した試料を次世代シークエンサーを用いて解析したところ、シアノバクテリアやクマムシが幅広く分布することや、特定の真核藻類の優占が確認されました。これらの知見は、南極大陸に生息する生物の有する低温・紫外線・凍結融解等のストレスへの適応機構の解明につながることが期待できます。

<詳細>

南極大陸のほとんどは厚い雪氷に覆われていますが、沿岸には陸地が露出した露岩域が存在します。露岩域は、南極大陸の面積の僅か0.2%程度ですが、微生物を中心とする多様な生物が確認され、南極のオアシスとも呼ばれています。南極の昭和基地の近辺には、ラングホブデ(Langhovde)とスカルブスネス(Skarvsnes)と呼ばれる2つの露岩域が存在し、これらの地域には大小50以上の湖沼が存在します(図1)。これらの湖沼の底は一年を通して水が凍らず、「コケ坊主」と呼ばれるコケや真菌などを中心とするユニークな生態システムが分布することが日本のグループによって発見され、研究が進められてきました。豊橋技術科学大学応用化学・生命工学系の広瀬侑助教らは、海洋研究開発機構、新潟大学、国立極地研究所との共同研究により、コケ坊主が生息する湖沼の底よりも浅い水辺や、雪解け水によって生じた水たまりや小川に着目して堆積物の採取を行いました。これらの環境は、冬期には完全に凍ってしまうため、凍結融解や温度変化など、湖底よりも激しいストレスにさらされると考えられます。

近年、環境中の微生物の種類と組成(群集構造)を解析する手法として、次世代シークエンサーを用いて環境中に含まれるリボソームRNAの遺伝子配列を解析する手法が発展しています。この方法は、顕微鏡による観察や、生物の分離を含む手法よりも感度が高く、定量性に優れています。広瀬助教は今回、日本の研究グループとしては初めてこの解析手法を南極湖沼近辺の解析に取り入れ、合計13地点の微生物群集構造を解析しました(図2)。その結果、細胞が数珠つなぎに連なった形態のシアノバクテリアが幅広く分布することが明らかとなりました。また、単細胞のシアノバクテリアや、ヘテロシスト*1 と呼ばれる細胞分化能を持つシアノバクテリアの割合は少ないことが明らかとなりました。真核生物でもっとも幅広く分布していたのは、乾燥および低温耐性を有するクマムシでした。クリプト藻類や緑藻といった特定の真核藻類の優占が一部の地点で確認されました。藻類を食べるタイプの線虫が含まれる地点もありました。興味深いことに、「コケ坊主」でもっとも優先していた真菌類は、これらのエリアではあまり見られませんでした。以上の結果により、湖沼の浅い部分や、水たまりや小川といった厳しい環境条件でも、多様な生物が生息していることがわかりました。

*1ヘテロシスト:糸状性のシアノバクテリアが持つ窒素固定に特化した細胞で、主に窒素欠乏条件において形成される。窒素固定を行うニトロゲナーゼを酸素から保護する機能があると考えられている。

<今後の展望>

今後は、これらの領域に生息する微生物が低温・紫外線・凍結といったストレスにどのように適応してきたのか、その分子機構の解明が期待されます。また、温度や光条件など、環境因子と微生物群集との関係の詳細を明らかにしていくことも重要です。これらの情報に基づいて、南極の生態系のモニタリングや保全を進めていくことも重要だと考えられます。

<論文情報>

Investigating Algal Communities in Lacustrine and Hydro-Terrestrial Environments of East Antarctica using Deep Amplicon Sequencing.

Hirose, Y., Shiozaki, T., Otani, M., Kudoh, S., Imura S., Eki, T., Harada, N.

Microorganisms 2020, 8(4), 497, doi.org/10.3390/microorganisms8040497

本研究は、JSPS科研費JP15H05712「極域プランクトン-その特質の理解―(代表者:原田尚美)」の助成を受けたものです。また、試料の採取は第60次南極地域観測隊の一般研究観測として実施されました。

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