News Release 

抗体産生不全症の原因遺伝子APRILを発見

新しい抗体産生療法への応用に期待―

Tokyo Medical and Dental University

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IMAGE: The first APRIL deficiency was found in an adult common variable immunodeficiency patient. We performed whole exome sequencing in the patient and found the homozygous deletion mutation in TNFSF13. Based... view more 

Credit: Department of Pediatrics, Perinatal and Maternal Medicine,TMDU

本学大学院医歯学総合研究科茨城県小児・周産期地域医療学講座今井耕輔准教授と発生発達病態学分野の葉姿汶大学院生と森尾友宏教授との研究グループは、広島大学、カロリンスカ研究所(スウェーデン)との共同研究で、APRIL遺伝子異常による抗体産生不全症を世界で初めて発見しました。この研究は文部科学省科学研究費補助金ならびに厚生労働省難治性疾患政策研究事業原発性免疫不全症候群の診断基準・重症度分類および診療ガイドラインの確立に関する研究班の支援のもとでおこなわれたもので、その研究成果は、国際科学誌The Journal of Allergy and Clinical Immunologyに2020年4月13日にオンライン版で発表されました。

【研究の背景】

分類不能型免疫不全症(CVID)は、遺伝子異常による原発性免疫不全症の中で最も多い疾患です。抗体産生の低下により、反復あるいは重症化する細菌感染症・ウイルス感染症を示します。B細胞数は正常範囲ですが、メモリー(記憶)B細胞と形質細胞のいずれかあるいは両者の減少が認められます。これまで10以上の原因遺伝子が同定されていますが、各遺伝子異常は極めて稀であり、ほとんどの例では原因遺伝子が同定されていません。疾患遺伝子の解明はヒト抗体産生のメカニズムの解明につながり、新たな治療法の開発への応用が期待されます。

【研究成果の概要】

クラススイッチ記憶B細胞と形質細胞が著明に減少している成人CVID患者で全エクソン解析をした結果、B細胞の増殖、分化および形質細胞の生存に関わる分子APRILをコードするTNFSF13遺伝子に変異を発見しました。APRILは主に単球、樹状細胞※4などの骨髄系細胞から分泌され、可溶性分子として働いており、欠損マウスはIgA欠損症を呈することが知られていましたが、ヒトAPRIL変異患者は未だ発見されていませんでした。患者は末梢血細胞および血清中でのAPRIL発現は完全欠損しており、APRIL欠損症と診断されました。 

患者からiPS細胞を樹立し、APRILを分泌しない樹状細胞に分化させ、健常者のメモリーB細胞と共培養しましたが、形質細胞への分化は減少していました。しかし、組換えAPRILにより形質細胞への分化は回復しました。以上のことから、患者ではAPRILによる刺激が欠損することで形質細胞への分化もしくは生存が障害され、その結果抗体産生不全を呈していると考えられました。

【研究成果の意義】

CVID患者の原因遺伝子には様々なものがあり、その解析からヒトにおける抗体産生のメカニズムが明らかになってきました。その一つとして、新たにAPRIL変異によるCVIDを世界で初めて発見しました。患者末梢血は頻回に入手することが困難なため、この研究ではiPS細胞を樹立して樹状細胞へと分化させ、in vitro でB細胞分化を行うことにより新たな病態モデルを確立することができました。形質細胞は生涯生存し抗体産生をすることが知られていましたが、本研究によりAPRILがその分化もしくは生存に必須であることが証明されました。このことから、今後は組換えAPRILを用いた抗体産生への治療応用が期待されます。

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【用語解説】

※1 APRIL:A PRoliferation-Inducing Ligand

ヒト17番染色体に位置するTNFSF13遺伝子によりコードされるTNF(腫瘍壊死因子)スーパーファミリー分子の一つ。APRILは、B細胞表面のTACI、形質細胞表面のBCMAと結合し、B細胞の増殖や分化に関わることが知られている。TACI、BCMAともに、TNF受容体スーパーファミリー分子であり、TACI欠損症は、CVID、IgA欠損症を呈することが報告されている。

※2 形質細胞

B細胞から分化した抗体産生細胞であり、生涯にわたって生存するとされている。細胞やウイルスに対抗できる抗体を作り、感染の発生を止める。

※3 iPS細胞

人工多能性幹細胞(induced pluripotent stem cells)。体細胞へ数種類の遺伝子を導入することにより、分化万能性と自己複製能を持たせた細胞。

※4 樹状細胞

外来病原体などの抗原を取り込んで、他の免疫細胞へ提示する抗原提示細胞の一つ。

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