ブタからヒトへの臓器移植を可能にするための取り組みにおいて、研究者らはCRISPR遺伝子編集技術を用いてブタ細胞株中のレトロウイルスのコピー全62個の不活化を試みてきたが、異種移植が可能なブタ臓器の作成に向かって重要な一歩がなされた。世界的にみて、移植のためのヒト臓器は不足している。ブタの臓器は有力な選択肢と考えられてきたが、全てのブタDNAに認められるブタ内在性レトロウイルス（PERV）がヒトに伝播する可能性があり、疾患を引き起こし得る。このため、ブタからヒトへの臓器移植は世界的に「実施待ち」の状態となっている。移植時の人へのPERV伝播リスクを低減するためのこれまでの戦略は、あまり成功してこなかった。今回George Churchらは、CRISPR-Cas9 RNAガイド下ヌクレアーゼシステムを用いて、レトロウイルスの複製に不可欠なpolと呼ばれるPERVの遺伝子の不活化に成功したことを報告した。著者らは、ブタ上皮細胞に存在するレトロウイルスのコピー62個を確定し、各コピー上のpol遺伝子を標的とする2つのCas9ガイドRNAをデザインした。次いで、遺伝子操作を行ったブタ細胞がレトロウイルスのヒトへの伝播をin vitroで阻止できるかどうかを調べたところ、PERVの感染力が最大で1,000倍も減少することが分かった。重要なこととして、Cas9をベースとしたゲノムエンジニアリング戦略は、ゲノム再構成を引き起こさないようである。ヒトに移植可能な臓器をもつよう遺伝子操作を行ったブタを作成するためには、ブタ胎仔細胞を用いた研究が今後必要である。
Article #26: "Genome-wide inactivation of porcine endogenous retroviruses (PERVs)," by L. Yang; M. G�ell; D. Niu; H. George; E. Lesha; D. Grishin; J. Aach; E. Shrock; W. Xu; J. Poci; R. Cortazio; G. Church at Harvard Medical School in Boston, MA; L. Yang; M. G�ell; G. Church at Wyss Institute for Biologically Inspired Engineering in Cambridge, MA; L. Yang; M. G�ell; G. Church at eGenesis Biosciences in Boston, MA; D. Niu at Zhejiang University in Hangzhou, China; W. Xu; R.A. Wilkinson; J.A. Fishman at Massachusetts General Hospital in Boston, MA.
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