水滴表面の脂肪酸が太陽光と反応して有機分子を生成することが、研究で新たに分かった。今回の研究結果は、本質的にこれまで知られていなかった種類の光分解反応を明らかにするものであり、気候に関する数値モデルといった、エアロゾル粒子の動態の解明に重要な役割を果たす数値モデルに影響を与える可能性がある。広く自然環境に存在するカルボン酸とその一種である飽和脂肪酸は従来、ヒドロキシルラジカルとのみ反応し、太陽光からの影響は受けないと考えられてきた。しかしこういった従来の結論は全て、気相中あるいは液相中の分子を対象とした研究結果に基づいていた。今回Stéphanie Rossignolと共同研究者らは、水面と相互作用している、気相と液相の界面にあるノナン酸(NA)の分子を調べた。その結果、気液界面のNAにUV光を照射すると、有機化合物が生成されることが確認された。研究者らは、汚染の可能性を排除するために一連の実験を行い、今回確認された有機化合物の発生源は確かにNAの光化学反応である、と結論付けた。今回確認された光化学反応の種類から考えて、同様の反応が全てのカルボン酸分子に共通して起こっている可能性がある、と著者らは言及している。脂肪酸が自然環境に広く存在していることを考慮すると、今回確認されたエアロゾルあるいは他の水溶液面上での光化学反応過程が局所的なオゾンや粒子の生成に与える影響は重大である可能性が高い、とも著者らは言及している。これまで重要視されていなかったこれらの二次生成有機物質が、二次生成有機エアロゾルの質量、構成、および光学的特性に影響を及ぼし、結果的に粒子が気候や大気質、さらには健康状態に及ぼす影響全体を決定付けることになる、とVeronica Vaidaは関連するPerspectiveにおいて語っている。
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