単一の遺伝子の発現が、細胞系列を転換して、精嚢を前立腺細胞に分化させられることが、新たな研究で示された。この結果は、2つの組織の発達をコントロールしている分子機序のさらなる理解を提供し、癌が前立腺細胞では高い頻度で発生するのに、精嚢ではごく稀にしか発生しない理由に関して価値ある洞察を与えることができる。これまでの研究では、マウスにおいて遺伝子Nkx3.1の欠失が前立腺の分化を妨げることが見出されており、これを受けてAditya Duttaらはこの遺伝子についてさらに詳細な研究を行った。その結果、第一に、前立腺細胞におけるNkx3.1の欠失が、前立腺分化に関連する一連の遺伝子の発現低下をもたらすことが確認された。次いで、Nkx3.1を発現するウイルスを精嚢上皮細胞に感染させたところ、この遺伝子の発現を誘導することで、精嚢上皮が構造、組織学的外観および遺伝子マーカーに応じて前立腺様の状態に転換することが示された。さらにヒト前立腺細胞を調べてみると、この「組織の再仕様」プロセスに関与する調節ネットワークのいくつかの要素、例えばある種のヒストン修飾酵素などが特定された。著者らは、このネットワークのさらなる探索が、研究者にとって前立腺癌が特定の組織に発生する機序を理解する助けとなると示唆している。
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