抽象的な特徴 ―― 「同じ」「違う」というパターンなど ―― を処理する脳の能力は広範囲なトレーニングを受けた高等な知能を持つ動物で証明されているが、今回、孵化したばかりの子ガモもトレーニングを全く受けずに同異を区別できることが示された。物体間の論理的関係性を認識し、その知識を保持し、新しい物体に適用する能力は関係概念学習として知られている。今まで、そういった学習はわずかな動物種に限りさまざまな強化トレーニングの後でのみ証明されており、人間独自のものと誤解されることも多かった。今回、Antone Martinho IIIとAlex Kacelnikが刷り込みというよく知られた社会的学習現象を組み込んだ行動実験を考案した。刷り込みとは、まだ何の知識も持たない脳が(多くの場合、親を認識するため)最初にできるようになる事の1つである。実験では孵化したばかりのマガモに形か色が同じもしくは異なる一組の物を最初に見せた。その後、新しい複数ペアの物を見せると、マガモは最初に刷り込んだ物と同じ関係のペアを選んで追いかけた。したがって、最も基本的な学習形式である刷り込みでさえ、より高次の認知推理によって形成されると考えられるとMartinho IIIとKacelnikは述べている。彼らによると、野生では関係思考に優れた幼いカモほど、環境によるどのような相違があろうと、母親と兄弟を認識できる可能性が高いという。「今回の研究は少なくとも3つの理由から重要である」と関係するPerspectiveでEd Wassermanは述べている。「1つに、今回の研究により、一般的に特に高い知能を持つとは考えられていない動物も抽象的思考ができることが示された。2つに、非常に幼い動物でさえ抽象的思考をするという行動的兆候が証明された。そして3つに、抽象的関係思考を示す信頼性ある行動的兆候は明確な賞罰過程を経験させなくても得ることができる。
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