News Release

世界初の迷路磁区を使った磁気光学Qスイッチレーザー

新原理に基づいた国産Qスイッチレーザーの発想から実証まで

Peer-Reviewed Publication

Toyohashi University of Technology (TUT)

Fig.3 Ryohei Morimoto and Assistant Professor Taichi Goto, Toyohashi University of Technology

image: Researchers working with the MO Q-switched laser. Left: PhD candidate Ryohei Morimoto. Right: Assistant Professor Taichi Goto. view more 

Credit: COPYRIGHT (C) TOYOHASHI UNIVERSITY OF TECHNOLOGY. ALL RIGHTS RESERVED.

高出力,高繰り返し,高安定な小型レーザーは,日々の製造プロセスを,よりシンプルで,低コスト,スピーディーなものに変えうると期待されている。ドイツでは,製造現場のデジタル化(高度情報化)がもたらす製造業の変革をインダストリー4.0と名付けられ,全工程の制御自動化が一つのキーポイントとなってきており,レーザー加工はこれに大きく寄与しうる。小型高出力レーザーの適用先は,これにとどまらず,自動車エンジンの点火プラグや,宇宙開発用スラスターシステムでの利用など多岐に渡る。

しかし,これまで,レーザーが出るタイミングや,繰り返し回数などが,制御可能で集積化可能な固体レーザー向けのQスイッチ素子は無く,開発が切望されていた。制御可能なQスイッチ素子は,電気光学素子や音響光学素子が広く知られていたが,光学素子の付属が必要であったり,分厚い結晶を用いる必要があったりと,原理的にmm以下の小型化が不可能であった。更にどちらも複雑かつ大型の制御電源が必須であり,小型レーザー本体のコンセプトにそぐわないものであった。

豊橋技術科学大学電気・電子情報工学系の後藤太一助教,分子科学研究所,アイオワ州立大学の研究者らのグループは、迷路状の磁気ドメインをもつ厚さ190マイクロメートル(マイクロは100万分の1)の透明磁性材料を用いて,初めて,膜のQスイッチの開発に成功した。磁気ドメインとは,磁石のN極とS極が膜の面の中に,ランダムに点在することによって生じるもので,磁気のまだら模様と言い表すことができる。実験では,高速磁気パルスを,透明磁石材料に印加し,パルス幅45ナノ秒(ナノは10億分の1),ピーク値約20ワットの,Qスイッチレーザーの取得に成功した。世界で初めての,集積化可能な磁石材料を使った初めてのQスイッチレーザーの結果報告となる。

さらに,磁性体の強みを活かし,小型永久磁石を,透明磁石材料の近くに設置することで,レーザーパルス発生に必要な電流を,7分の1にまで,低減できることを実験によって示し,チップに収まる程度の小型の制御回路で,同機能が実現できることも示した。本成果は小型高出力レーザーの発展に大きく寄与することが期待される。

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ファンディングエージェンシー:

  • 日本学術振興会 科研費 26706009, 26600043, 26220902, 25820124, 15H02240
  • 国立研究開発法人 科学技術振興機構 さきがけ


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