80人以上の乳児を対象とした新しい2件の研究で、出産様式および食事と共に、抗菌薬がどのようにして腸マイクロバイオームの発達を阻害しうるのかがより明確に示された。誕生後数年の間に繰り返し抗菌薬投与を受けた小児は、細菌の多様性が低いだけでなく、投与後一時的に抗菌薬耐性遺伝子を有していた。現在の抗菌薬耐性危機を考慮すると、以後の人生における肥満、糖尿病、喘息、アレルギーと関連づけられているこのような腸マイクロバイオームの異常の長期的結果を調べるために、さらに研究を行う必要がある。人間の腸に住む細菌集団は、体の代謝と免疫防御の制御に重要な役割を果たしている。しかし、幼児期の早期に腸マイクロバイオームがどのように発達するのかは完全にはわかっていない。まして、マイクロバイオームが、抗菌薬投与、帝王切開(経膣分娩ではなく)、人工乳(母乳と比較して)などの環境変動にどのように反応し回復するのかについてはさらにわかっていない。小児に対する抗菌薬投与は世界のほとんどの地域で日常的に行われており、平均的な米国の小児は2歳までに抗菌薬投与を3コース受ける。Nicholas Bokulichらは起こり得る結果についてさらに見識を得るため、米国の乳児の糞便検体並びに誕生前後の母親からの追加検体を採取し、乳児43例の微生物の発達を誕生後2年間追跡した。Bokulichらは、抗菌薬、帝王切開、および人工乳が乳児のマイクロバイオームの発達を遅延させ、細菌の多様性を低下させることを明らかにした。産道の通過、母乳の授乳、皮膚接触の際に乳児の腸に住み着くことが知られている母親自身の微生物叢も、乳児の微生物叢の健全な発達に影響を与える可能性がある。 39人の小児から3年以上採取した糞便検体を解析した2件目の研究で、Moran Yassourらは、抗菌薬の反復投与によって腸の微生物多様性が低下し、抗菌薬耐性遺伝子が一時的に増加したことを明らかにした。生後数ヵ月間、帝王切開で誕生したすべての乳児、および予想外であるが経腟分娩で誕生した乳児の約20%に、腸免疫の制御を助けることが知られている細菌Bacteroidesが検出されなかった。このことは、出産様式と他の要因が細菌多様性に強い影響を与えうることを示唆している。抗菌薬投与を受けた小児も、種と系統のレベルで微生物叢の多様性が低く不安定であった。またYassourらは、これらの小児の腸に抗菌薬耐性遺伝子が存在することも明らかにした。耐性遺伝子は抗菌薬投与後に速やかに量がピークに達し、その後急速に減少した。興味深いことに、理由は完全にはわかっていないが、抗菌薬の曝露を受けていないわずか2ヵ月齢の一部の乳児でさえ抗菌薬耐性遺伝子を持っていた。関連するオーディオファイルでは、著者であるYassourとRamnik Xavierが、特に抗菌薬耐性遺伝子の広がりにより懸念されている脅威を考慮し、繰り返し抗菌薬投与を受けている乳児と小児について、公衆衛生に対するこの知見の意義を取り上げる。
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Journal
Science Translational Medicine