News Release

腸炎の発症を防ぐ鍵分子を世界で初めて発見

Peer-Reviewed Publication

Kobe University

Immunofluorescence Image of Mouse Colon

image: SAP-1 localizes to the microvillus of the brush border in colonic epithelial cells. SAP-1 (red), β-catenin (green), and nuclei (blue). view more 

Credit: 2004- Kobe University. All Rights Reserved.

このニュースリリースには、英語で提供されています。

神戸大学大学院医学研究科シグナル統合学分野の的崎尚教授と村田陽二准教授らの研究グループは、クローン病や潰瘍性大腸炎といった炎症性腸疾患の発症を防ぐ鍵となる可能性のある分子「SAP-1」を世界で初めて発見、さらに腸炎の発症を防ぐ仕組みについても同時に明らかにしました。今後、クローン病や潰瘍性大腸炎の治療薬開発に大きく貢献することが期待されます。この研究成果は米国科学アカデミー紀要電子版に7月20日付けで掲載されました。

クローン病や潰瘍性大腸炎といった炎症性腸疾患は、腹痛や下痢、血便、発熱、体重減少を伴う原因不明の疾患。患者は日常的な活動に長期間支障をきたし、大腸がんのリスクが高まり重症な例では死に至ることもあります。日本での患者数は約20万人近く、指定難病のひとつとなっています。これまで、炎症を抑える効果のある薬剤が一定の治療効果をもたらしていましたが、より根本的な治療薬の開発が望まれています。

最近では、腸内部の腸上皮細胞が腸の炎症の制御に重要な役割を果たすことが報告されていましたが、そのメカニズムについては十分に分かっていませんでした。的崎教授と村田准教授らは、腸上皮細胞の中でも一番内腔側にある微絨毛と呼ばれる構造に集まっているSAP-1という分子を発見していました。SAP-1は、細胞膜に存在して、その頭の部分を腸の内腔に出しており、細胞の中の部分にはチロシンホスファターゼという酵素の活性を持っています。今回、SAP-1の機能を知るために、SAP-1をなくしたマウスを作ったところ、このマウスは、腸炎が起こり易い条件下では腸炎の発症率と重症度が著しく高まることが確認されました。すなわち、SAP-1は腸炎の発症を防ぐ機能をもつことが考えられます。

さらに、SAP-1は同じく腸上皮細胞の微絨毛に存在するCEACAM20という分子の機能をチロシン脱リン酸化を介して抑制することで、腸炎の発症を防いでいる可能性が高いことがわかりました。この研究成果によって、これまで不明であった腸上皮細胞による腸炎制御のメカニズムの一端が明らかになりました。また、SAP-1やCEACAM20の機能を制御する薬剤が、難病である炎症性腸疾患の克服に繋がることが期待されます。

的崎教授は、「1994年に神戸大学でSAP-1を発見して以来、多くの共同研究者の努力によって漸くその機能を明らかにすることが出来ました。今後は、SAP-1やCEACAM20の機能をより研究することにより、炎症性腸疾患の新たな治療薬の開発をしたい」と話しています。

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