News Release

骨を溶かす細胞の機能を動物の体内で可視化

移動しながら溶かす場所を探す破骨細胞をその場で観測

Peer-Reviewed Publication

Osaka University

Vivo Excitation Spectra of Phocas-3 and Tdtomato

image: In vivo excitation spectra of pHocas-3 and tdTomato view more 

Credit: Osaka University

大阪大学免疫学フロンティア研究センターの菊地和也教授(工学研究科)、石井優教授(医学系研究科)らの研究グループは、破骨細胞[1]が実際に骨を溶かしている部位を可視化する蛍光プローブ[2]を作製し、独自に開発した生体2光子励起イメージング[3]装置を用いて、in vivo (生体そのまま)における破骨細胞の機能評価に成功しました。低分子プローブには標的細胞が存在する特定の組織への選択的輸送ができる仕組みが施され、骨を溶かす場所でのみ蛍光を発するスイッチ機能も組み込まれることで、破骨細胞活性を選択的に可視化できることを示しました。また、蛍光タンパク質により標的細胞をラベル化し、低分子プローブと蛍光タンパク質の蛍光シグナルを同時に検出することで、細胞の局在変化と活性変化をリアルタイムに画像化し、骨を溶かす強さを定量化することに成功しました。本研究成果は、6月7日(火)『Nature Chemical Biology』にオンライン掲載されました。

本研究では簡便かつ安定に測定できる「機能している破骨細胞を検出」する in vivoイメージング手法を確立しました。特に、分子デリバリーを最適化することで、分子プローブを皮下注射するだけでマウス個体のイメージングを達成しました。実際のin vivoの状態で使える分子プローブはこれまでほとんど存在しなかったため、本研究はin vivoイメージングの分野に大きなインパクトを与えると考えられます。

蛍光タンパク質を用いる既存の手法では、破骨細胞の局在の情報は得られても、その活性まで調べることはできませんでした。しかし本手法は、破骨細胞の活性情報が簡便かつ迅速に得られることから、患部の早期診断や新規治療薬のスクリーニングに有効であり、医療や産業界に大きく貢献できると予想されます。また本研究は、物理化学の原理に基づく分子設計、有機合成化学による機能性蛍光プローブの構築、免疫学の知識・技術を用いた生体内機構の解明、という複数の分野の枠組みを越えた学際的研究であり、医学、化学、測定機器メーカーに関連する分野に幅広く貢献し、基礎研究から医学研究応用まで達成した研究として社会的にも学術的にも極めて大きな意義がある、と考えています。

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用語解説

1. 破骨細胞

破骨細胞は、造血幹細胞から分化して細胞が融合した多核細胞として生まれる骨吸収細胞であり、骨の成長、修復に関与する重要な役割を果たす。破骨細胞機能の異常化と骨疾患発症との密接な関連が指摘されている。例えば、過剰な骨吸収によって骨粗しょう症や関節リウマチを発症する。

2. 蛍光プローブ

プローブは元々探針という意味だが、転じて蛍光プローブは、特定の分子と反応することで強い蛍光を発したり蛍光色を変えたりする機能性分子を指す。

3. 生体2光子励起イメージング

体内透過力が高い近赤外領域の光子2つが吸収された結果、可視光領域に波長遷移することを利用して開発された。生物体内における細胞の動きを直接顕微鏡で検出する。


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