2015年にカリフォルニアで起きたガス井噴出によるメタン漏出率について、新しい研究によって初の定量的評価のひとつが行なわれた。この事故でメタンが放出された結果、ロサンゼルス盆地全域の発生源からのメタン放出量が、一時的に2倍になったことが示唆された。世界的に見ると、地下天然ガス貯蔵施設には、世界の年間ガス消費量の10%にあたる量が貯蔵されている。2015年10月23日、ロサンゼルス郊外にあるアライソ渓谷地下貯蔵施設(この種の施設としては米国で4番目に大きい)につながる井戸が噴出した結果、かなりの量の天然ガスが放出され、多くの住民が避難することになった。今回、衛星リモートセンシングと地上リモートセンシングと噴出地点での地上観測を行ない、Stephen Conleyらはこの事故で大気中に放出されたガスの量を求めた。処理済みの天然ガスはおもにメタン(強力な温室効果ガス)とエタンから成る。Conleyらはこの研究の一環として、2015年11月7日から2016年2月13日(漏出が一時的に止まった2日後)の間に、研究用航空機を13回飛行させ、その際に得られたメタンとエタンのデータを分析した。そのデータから、噴出による大気中への漏出率は、メタンが1時間あたり60トン、エタンが1時間あたり4.5トンに達することもあったことが示唆された。著者らによると、こうした規模の放出により、ロサンゼルスのメタン放出率が一時は実質2倍になったという。この研究によって、漏出率データを得るには、迅速に大気中の化学物質を採取するのが有効なことが明らかになった。
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