たった1つの例から新しい概念を学習するという、人間に特有の能力を獲得したコンピューターモデルが作られた。このモデルはアルファベットの手書き文字を覚えることしかできないが、その根底にある方法を用いると、身振りやダンスの動作や話し言葉や手話といった、記号に基づくその他のシステムにも拡大適用が可能である。近年、機械学習は着実に進歩しているものの、新しい概念の学習においては、人間はいまだに機械よりはるかに優れており、人間がたいてい1、2例しか必要としないのに対し、機械は通常数十、数百例を必要とする。さらに人間は、ある概念を最初に学習してしまえば、通常それをじつにさまざまな方法で活用することができる。Brenden Lakeらは、こうした人間の学習能力を獲得したモデルを開発しようとした。彼らは多数の単純な視覚概念 ―― 世界中のアルファベットの手書き文字 ―― に注目し、この多数の視覚記号を「学習」して、それをわずかな例から一般化するようなモデルを作った。彼らはこのモデル化方式を、ベイズ的プログラム学習(Bayesian program learning:BPL)方式と呼んでいる。BPL方式を開発後、難しい5つの概念学習タスク(数回見ただけの文字に関して、新しい例を生成するなど)について、人間とBPLと別の計算方法とを直接比較した。難しい単発の分類タスクにおいて、BPLモデルは人間レベルの性能を達成するとともに、最新の深層学習方法よりも優れていたという。彼らのモデルは、手書き文字の分類・分析・再現をおこない、新たなアルファベット文字を生成することができる。チューリングテストに似たテストを使って、モデルの出力と本物の人間が書いたものとを比べた結果、モデルが生成した文字は「正しい」と判断された。
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