News Release

顔色はどのように無意識下の情動を形作るか

目に見えない表情のほのかな赤みに込められた役割

Peer-Reviewed Publication

Toyohashi University of Technology (TUT)

明示的な表情(1〜3列目)とハイブリッド表情(4、5列目)

image: 自然な色(上段)と赤みを帯びた色(下段)の両方における明示的な表情とハイブリッド表情 view more 

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概要

豊橋技術科学大学情報・知能工学系視覚認知情報学研究室ならびに認知神経工学研究室から成る研究チームは、顔色が“明確に自覚していない表情の認知”に影響を与えることを発見しました。赤みを帯びた顔が幸せや怒りを連想させることはよく知られていますが、本研究は、そのような赤みを帯びた顔が無表情であると観察者が自覚していても、顔の赤みがその顔に対する友好度評価(親しみやすさ)を高めることを示唆しました。この研究の結果は、2023年9月16日付のCognition and Emotion誌上で発表されました。

 

詳細

「顔を真赤にして怒る」という表現があるように、私たちの顔色はその時の感情によって変化し、顔色と表情(情動)には密接な関わりがあることが知られています。しかし、これまでの研究は、“はっきりと表情がわかる顔”、すなわち意識上の表情認知を研究対象としており、“明確に自覚していない表情認知”に対して、顔色がどのような影響を与えるかは不明でした。

 

そこで本研究チームは、“ハイブリッド表情”という特殊な表情画像を使用して、心理物理実験を実施しました。ハイブリッド表情は、幸せ表情あるいは怒り表情と、無表情の顔を異なる空間周波数で混在させた表情で、情動研究でよく使われる実験刺激のひとつです。

 

第一の実験では、これらのハイブリッド表情が無表情に見えること、すなわち観察者がその顔に情動があると自覚していないことを確認しました。第二の実験では、その顔を赤く着色したときにこれらのハイブリッド表情がどの程度親しみやすく見えるかを検証しました。その結果、赤みを帯びた顔は幸せ表情をより親しみやすく見せることが分かりました。最後に第三の実験では、赤みを帯びた顔であっても、やはり脳内ではこれらのハイブリッド表情の情動を知覚されていないことが確認されました。総じて、顔色は情動の認知に対して暗黙的に影響を与えるものであり、この現象は観察者自身が自覚していない場合でも起こりうることが明らかになりました。

 

本研究の構想を提案した情報・知能工学系認知神経工学研究室の南哲人教授は、「顔が赤いほどその顔が怒っていると見えるように、顔色が表情認知を変化させることが先行研究によってわかっています。もしかしたら、顔色が表情認知に与える影響は大きく、意識・無意識に関わらず私たちの情動を変化しうるのではないかと考え、本研究を着想しました」と説明しています。

 

本論文の第一著者である情報・知能工学専攻博士前期課程2年グエン・ホアン・ナム氏は次のように語っています。「現在、人工知能(AI)の進化は目を見張るばかりですが、AI機器が人間の顔に出る隠された感情を認知するのはまだ難しいのが現状です。実際の人間においてさえも、日々の生活においてそのような感情を認知するのは難しいのです。我々の研究により、日常生活中で顔から情動を読み取る行為、例えば、会社における社員の心構えの把握、顧客対応のサポート、犯罪心理の特定などの分野での応用が可能になる見込みがあります。現代の科学技術の迅速な進歩により、これらの応用が実現される日もそう遠くないでしょう。」

 

今後の展望

本成果は、暗黙的な情動に対する顔色の影響をはじめて検証したものです。今後は様々な背景(人種、年齢など)の参加者群を対象にこの現象が展開されるかを検証することが課題です。

 

論文情報

Nguyen, H. N.†, Tamura, H.†*, Minami, T.*, & Nakauchi, S. (2023). The effect of facial colour on implicit facial expressions, Cognition and Emotion, doi.org/10.1080/02699931.2023.2258575.

†These authors share first authorship of this work. *Corresponding author.

 

本研究はJSPS科研費 JP21K21315, JP22K17987, JP20H04273, JP19H01119の助成を受けたものです。


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