News Release

袋葉植物および海カタツムリにみられる独自の形質の進化起源が明らかに

Peer-Reviewed Publication

American Association for the Advancement of Science (AAAS)

2件の研究において著者らは異なるアプローチを用いて、複雑かつ全く新しい表現形質が植物と動物でそれぞれどのように進化したのかを検討した。「地球上における植物と動物の驚くべき多様性は回りくどい経路で進化したものであり、ゲノムと表現形質の複雑な歴史を紐解くことは進化に対するさらなる深い理解をもたらす」と、Kathryn Elmerは関連するPerspectiveで述べている。生物学的形質は個体群の中で常に変化しているが、独自の機能をもたらす一つの形質の出現は、はるかに稀な出来事である。「ゲームチェンジャー」となるこうした進化上の全く新しい変化は、複数の独立した生物学的適応の結果であり、これらの適応が組み合わさって、複雑な表現型形質を生み出す。しかし、こうした複合的な形質の起源については、別の組み合わせではそれ自体が利益をもたらすものでもなければ、さらには機能的なものでもないような要素の協調的な進化が必要となるため、いまだにほとんど謎のままである。

 

今回、2件の研究でGuillaume ChomickiらとSean Stankowskiらがそれぞれ異なるアプローチを用いて、複雑で複合的な形質がいかにして予期しない仕方で生じたのかを、一方は袋葉植物の食虫植物について、他方は海カタツムリ(periwinkle snail)について検討した。Chomickiらは、野外実験、顕微鏡観察、化学分析、レーザードップラ振動計、系統樹解析による比較を用いて、捕虫袋を有するウツボカズラ科の食虫植物2種Nepenthes gracilisおよびNepenthes pervilleiの進化について調べた。この独自の複合的な捕虫機構は、構造的、化学的および機械的な3つの新しい進化の結果として生まれた。Chomickiらは、この新しい形質はこれら2種の食虫植物においてそれぞれ独立して進化してきたことを発見し、この新しい形質が、構成する複数の形質の方向性選択によるのではなく、必要な形質の組み合わせの「自然発生的な同時発生」により収束的に進化してきたものであることを示唆した。もう一件の研究でStankowskiらは、海カタツムリ(Littorina spp.)のクレードにおける卵生から胎生への比較的最近の移行の進化的起源について検討した。全ゲノムシークエンシング(GWS)でなければ識別できない胎生と卵生のカタツムリについて、著者らはGWSを用いてそれぞれの生殖様式に関連するゲノム領域を同定した。その結果、卵生と胎生に関連するゲノム領域は、ゲノム全体と比べるとそれぞれ異なる進化の道筋を辿っていることを見出した。これらの結果に基づいて、胎生カタツムリの遺伝的特徴は、その形質が選択下にあるにもかかわらず、またこの種の生物学的特徴にとって不可欠なものであるにもかかわらず、ゲノムのほとんどの領域には反映されていない。Stankowskiらによれば、これらの結果から、新しい生物学的機能は、単一の進化ステップによるのではなく、多くのアレルのリクルートにより可能となることが示唆されるという。「多様性の進化において、小刻みな変化の蓄積か、大きな飛躍か、どちらがより重要なのかについては、これまで長きにわたる議論があった」と、ElmerはPerspectiveで述べている。「ChomickiらStankowskiらは、当該種を表現型の大きな変化の新たなレベルへと変化させる、単一の大きな進化ステップや大きな影響を及ぼす遺伝子変異を同定しなかった。」


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