大規模言語モデル(LLM)と関連技術が、仕事に破壊的な影響をもたらそうとしているが、このリスクを評価したり、それに対処するための政策を策定したりする取り組みはほとんど行われていない。Policy ForumでTyna Eloundouらは、LLMによる労働市場への影響を評価するために自身らが策定した評価基準の成果を報告している。報告によると、高賃金の職業ほどLLMにさらされる。LLMによる労働市場への影響を理解することに狙いを定めた文献は増え続けているものの、AIシステムに「さらされること」が、実世界における労働需要や賃金、不平等、仕事の質といった重要な結果にどのように影響していくのかについて、いまだ明確には理解されていない。今回、Eloundouらは、多数の職業とその詳細なワークフローを網羅しているO*NET 27.2データベースを利用し、特に923の職業に焦点を合わせた。人間および訓練されたGPT-4を用いて、LLMは人間がタスクを実行する際の質を維持または向上させながらその所要時間を50%以上短縮できるか、について評価した。著者らは、労働者の約80%は仕事上のタスクの10%以上がこのような形でLLMの影響にさらされる職業に就いており、労働者の18.5%はタスクの50%がさらされる職業に就いている、と推定している。さらに探索的解析を行ったところ、タスクの1.86%は完全自動化が可能で人間による監視も不要になるかもしれないと示された。Eloundouらは、概して低賃金の職業よりも高賃金の職業ほどLLMの影響にさらされることを見出した。実際、最もLLMにさらされる2つの職業グループは「科学者と研究者」および「科学技術者」である。ただし、現在はLLMの力が及ばないと考えられているタスクでも今後の技術革新によって実現性が高まるかもしれず、逆に、LLMにも対処できそうだと考えられているタスクが予期せぬ障壁にぶつかる可能性もある、と著者らは述べている。今回の取り組みは、LLMの導入における変化を和らげ、より社会的に有益な方向へとその開発を導くことで、大きな経済的利益を得てそれを広く分配できるような政策を策定する重要性を強調している。
この論文にご興味のある記者の方へ:2022年4月にScience Roboticsで発表された研究では、ロボットや人工知能に仕事が奪われるリスクがどの程度あるかを見定める方法が研究されました。この成り行きを緩和するための戦略についても提案されています。
Journal
Science
Article Title
GPTs are GPTs: Labor market impact potential of LLMs
Article Publication Date
21-Jun-2024