image: Aerial view of Bikar Atoll, with southern tip and Bikar Islands in the foreground. The National Geographic Pristine Seas team, in collaboration with the Marshall Islands Marine Resources Authority (MIMRA) and the Government of the Marshall Islands, conducted an expedition to the remote atolls of Bikar, Bokak, Bikini, and Rongerik. This expedition was in support of Reimaanlok, the Marshallese national framework for the planning and establishment of community-based conservation areas. In 2025, the Republic of the Marshall Islands established their first national marine sanctuary — which covers 48,000 square kilometers of water — providing an exceedingly rare glimpse into a pristine part of the Pacific Ocean.
Credit: Steve Spence, National Geographic Pristine Seas
衛星画像と人工知能の技術を活用した2つの独立した研究で、世界の沿岸海洋保護区(MPA)における産業漁業のパターンが明らかになった。総合すると、今回の研究結果は、矛盾していると思われるかもしれないが、世界の多数の保護区内に産業漁船が入っているにもかかわらず、保護レベルが最も高いMPAでは漁業はほぼ行われていない状態が保たれていることを示している。どちらの研究も、保護区への適切な投資は成果が出ること、及び、合成開口レーダー(SAR)衛星技術は海洋の今後の持続可能性を守るために使う主要手段の1つになりうることを示唆している。世界の海洋の約8%は正式に保護されており、2030年までに保護範囲を3倍以上にすることを目指すという野心的な国際目標がある。そのような保護は、特に適切な漁業管理と組み合わせるとかなりの長期的利益を生み出せるが、潜在的利益は不十分な規制によって損なわれることが多い。多くの事例として、指定された保護区内でさえも保護措置が不十分であるために破壊的、違法、若しくは無報告の漁業活動が続いている。MPA内を含む地球規模での産業漁業モニタリングは、個々の船舶の活動を追跡する船舶自動識別装置(AIS)データが出現したことで助けられてきた。しかし、全ての船舶がその使用を義務付けられているわけではない。多くの船舶は検出されないようにトランスポンダーを無効にしており、それゆえ、MPA内の漁業圧について信頼できる大規模な推定値を得ることは難しい。その結果、世界のMPAの真の有効性は依然としてほぼわかっていない。
1つ目の研究では、Jennifer RaynorらがMPAガイド - 規制と管理慣行の両者を基に保護を評価する評価枠組み - で「完全に」若しくは「高度に」保護されているに分類されている455の沿岸MPAについて分析を行った。これらのカテゴリーでは区域内での産業漁業は全面的に禁止されている。Raynorらは、AI手法と最近発表された地球規模のSAR衛星画像データセットを組み合わせて、MPA内で操業する産業漁船を、それらのAISの作動状況にかかわらず、直接特定した。その結果、おおむね、産業漁業活動が禁止されているMPAでは無許可の産業漁業はほとんど発生していなかった。漁船は2万平方キロあたり平均1隻しかおらず、これは保護されていない排他的経済水域での割合の9分の1であることが判明した。東及び南アジアの少数のMPAでは漁船密度は高かったが、これらの事例は地理的な狭さと散発的な検出に起因する外れ値であった。調査を行った日の半数以上で漁船がいたのは世界のMPAの7ヵ所に過ぎず、このことは高度に保護された地域では産業漁業活動がいかにまれであるかを浮き彫りにしている。Raynorらは、無許可漁船の検出におけるSAR画像の信頼性についても実証している。この方法は、AISデータ送信船舶を高い精度で特定することに実際に成功したのみならず、特に東南アジアのようなAISが不完全なことが多い地域において、AISデータが何も示さない163のMPAでも船舶を検出した。
もう1つの研究ではRaphael Seguinらが、国際自然保護連合(IUCN)の管理枠組みで概説されている様々な保護カテゴリーを代表する6,021の沿岸MPAという広範囲での漁業活動を定量化した。Seguinらは、同じSARデータセットと深層学習モデルを用いて、評価を行ったMPAの約半数に産業漁業を示すエビデンスがあり、多くの事例では非保護水域の近くでの産業漁業と同等若しくはそれ以上の操業レベルであったことを発見した。その調査結果によると、産業漁船は世界の沿岸MPAの47%で発見されたという。IUCNの厳密なカテゴリーは漁業活動の減少と相関関係があったが、Seguinらは、MPAの規模や遠隔性といった要因での方が公式な保護カテゴリー単独でより漁業活動の有無を予測しやすいと結論付けている。PerspectiveではBoris Wormが、この2つの研究成果の差異の根底にあると思われる要因について考察している。「多くのMPAは、強力な保護規制や地域の利害関係者との有意義な話し合い、適切な管理能力なしに、にわか仕込みされたもので、場合によっては、こういったMPAは、保護区として認識されてはいても、有害な活動を防ぐことはない「書類上の保護区」となっている。しかし、適切な投資が行われ、漁業による搾取が減り、保護措置が包括的であれば、長期的な利益が見込まれることが入手可能なデータによって示された」とWormは書いている。
Journal
Science
Article Title
Little-to-no industrial fishing occurs in fully and highly protected marine areas
Article Publication Date
24-Jul-2025