News Release

丘から谷への水の流れが気候を変える? ――斜面水動態・植生分布・水とエネルギー循環の新たなつながりを発見――

Peer-Reviewed Publication

Institute of Industrial Science, The University of Tokyo

丘から谷への水の流れが気候を変える?――斜面水動態・植生分布・水とエネルギー循環の新たなつながりを発見――

image: 斜面の植生分布を陸面モデルで精緻に表現 view more 

Credit: 東京大学 生産技術研究所

 東京大学 生産技術研究所の李 庶平 特任研究員、山崎 大 准教授、芳村 圭 教授と中央大学の新田 友子 准教授による研究グループは、陸面モデルにおいて、斜面の水動態と植生分布をこれまでより精緻に表現する手法を開発しました。新しいモデルを用いてアフリカ大陸で陸面の水・熱循環シミュレーションを行ったところ、広い範囲で既存モデルと比べて蒸発散・流出量の増加と土壌水分の減少が見られ、斜面の水動態が水とエネルギーの循環に大きな影響を与えることを明らかにしました。

 地球では、雨や雪、日射、蒸発散といったプロセスによる大気と陸面の間での水とエネルギーの交換により、各地域の気候や環境が作られています。この水とエネルギーの移動は、鉛直方向だけでなく斜面に沿った水平方向でも起こります。例えば、斜面の水は谷へ流れ、谷は丘よりも湿りやすくなります。その結果、乾いた地域では、谷沿いに河岸林ができ、湿った地域では、湛水により斜面下部で植生が疎になるなど、斜面内の場所によって植生の分布が変わります。植生は、蒸発散や光合成を通して大気と陸面の水とエネルギー交換に影響するため、斜面での水の動きと植生分布を気候モデルでも考慮することが求められています。

 本研究では、斜面における水動態と植物分布をより、詳細に陸面モデルで表現し、アフリカ大陸を対象とした数値シミュレーションによって、斜面の水動態が水とエネルギーの循環にどのような影響を及ぼすかを調べました。その結果、植生分布を正確に表現するほど、流出や蒸発量の変化が大きくなり、特に赤道付近の河岸林や湛水型湿地のある地域で顕著に現れることが分かりました。また、広い地域で蒸発や流出量が増え、土壌水分が減る傾向も確認され、水とエネルギー循環の予測精度も向上しました。

 この研究を継続することにより、今後、気候変動が生態系や人間社会に与える影響や、陸地から気候へのフィードバックをより正確に評価することを目指します。


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