News Release

新しい刺激応答発光材料が、次世代の可能性を照らす

これまで結晶の破壊が不可欠と考えられてきたメカノルミネッセンスの常識を覆し、新たな可能性を示しました

Peer-Reviewed Publication

Okinawa Institute of Science and Technology (OIST) Graduate University

メカノルミネッセンス

video: 発光性銅錯体の非晶質薄膜を曲げる、捻じる、擦る、剥がす、ねじると、美しい発光が出る。これらの材料は、産業工学や安全技術での応用が期待される。 view more 

Credit: 画像:狩俣歩

17世紀、哲学者 フランシス・ベーコンは暗闇で硬い砂糖の塊を砕くと光ったた、という実験結果を記録しています。この発光は「メカノルミネッセンス(ML)」または「トライボルミネッセンス(TL)」と呼ばれ、砕く、擦る、すり潰す といった力学的刺激により物質が光を発する現象です。これまで発光分子のメカノルミネッセンスは、硬い結晶性の材料を破壊した瞬間に生じると報告されており、応用範囲は限られていました。しかし今回、沖縄科学技術大学院大学(OIST)の研究チームは、非晶質の発光材料で、メカノルミネッセンスを発生させる方法を発見しました。この成果は、工学や製造産業における安全技術など幅広い分野で新たな応用の可能性を切り拓く可能性があります。

「結晶は力学的な刺激を受けると破壊され、サイズが小さくなるにつれてメカノルミネッセンスの特性も失われるため、応用には制約があります。さらに、結晶におけるメカノルミネッセンス特性は分子構造や結晶内の分子配列に強く依存するため、材料設計が複雑になります。そこで私たちは、よりシンプルな方法で繰り返し発光が期待できる『非晶質材料のメカノルミネッセンス』を研究しました」と、OIST錯体化学・触媒ユニットのジュリア・クスヌディノワ教授は説明します。

英国王立化学会が発行する学術誌『Chemical Science』に掲載された本研究では、フォトルミネッセンス (蛍光、燐光) 特性を有する一連の化合物のメカノルミネッセンスの調査が行われました。研究チームは、これらの化合物の非結晶性薄膜を作り、二つの表面を押し付けて離す動作(接触・剥離)や摩擦など、さまざまな刺激方法で光るかどうかを検証しました。詳細な研究から、力学的刺激によって起こる帯電で局所的な電場が発生し、それが発光材料と周囲のガスの励起に関わっていることを示唆する実験結果が得られました。そして、非晶質薄膜の表面をプラスチックフィルムで覆い、フィルム越しに間接的に刺激を加えた場合でもメカノルミネッセンスが生じることが明らかとなり、「非破壊型の力学的刺激によるメカノルミネッセンス」が発光分子において実証されました。、この実験結果は、新たな刺激応答材料の設計において重要な知見となります。

「これまで、研究者達は、発光分子を力学的刺激で光らせる場合、その結晶を壊すことが不可欠だと考えてきました」と、本研究の筆頭著者である狩俣歩博士は語ります。「しかし、それが必ずしも必要ではないことを示しました。この発見により、力に応答して光る材料の開発に結晶を使用する制約がなくなり、材料科学の未来に新らたな扉が開かれます。」


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