News Release

人工股関節全置換術後の骨折予防に新展開?-カラー(襟)付きHAステムの有効性に期待-

Study reveals key insights on the type of femoral stem that minimizes the risk of early postoperative femoral fracture

Peer-Reviewed Publication

Chiba University

image: 

This type of stem was found to be better at preventing early femoral fracture after total hip replacement than flat-tapered wedge stems.   

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Credit: Nakashima Health Force Co., Ltd.

■研究の背景

 変形性関節症は世界中で約5億人が、国内では約3000万人以上が罹患しています。特に高齢者の患者が多く、その数は今後も増加傾向とされています。日本の介護保険制度において、要支援となる最大の原因であり、運動器障害による社会的・経済的負担は甚大です。中でも変形性股関節症(注3)は手術件数が年々増加しており、THAは高齢者を中心に広く行われています。

 THA後の早期POPFFは、再手術の最も多い原因であり、患者のQOLや生命予後に深刻な影響を与えることが知られています。特に高齢者や骨粗鬆症患者などで発生リスクが高く、近年、その発生率は増加傾向にあります。これまで、POPFFのリスク因子として年齢、性別、骨形態、骨粗鬆症などが挙げられてきましたが、「ステムの設計がPOPFFに及ぼす具体的な影響」や、「より安全なインプラント選択の指針」については十分なエビデンスがありませんでした。本研究は、こうした背景から「異なる設計のステムが早期POPFF発生率に及ぼす影響」を大規模に検証し、より適切なインプラント選択と骨折予防戦略の確立を目指して実施されました。

 

■研究の成果
 
本研究では、THA後早期のPOPFFの発生頻度について、世界的にも日本国内でも最も広く使用されている、テーパーウェッジ型ステムとカラー付きHAステムの2種類の大腿骨コンポーネントを比較しました。対象は単一術者・単一施設で施行された4,511例で、年齢・性別・診断名などを統計的にマッチさせた各1,804例についてPOPFF発生率を比較しました (図2)。

 早期POPFFは「術中や術直後のレントゲンでは確認できなかったが、術後90日以内に発生した骨折」と定義しました。その結果、カラー付きHAステム群では、POPFF発生率が0.11%と、テーパーウェッジ型ステム群(0.72%)よりも有意に低いことが明らかとなりました。骨折が減った理由として、研究チームは、以下を挙げています:

・   「カラー」が骨に早く安定感を与える。

・   ステムが荷重をうまく分散させ、骨にかかる力を和らげる。

・   二重テーパー構造により、骨とのフィット感が高い。

 一方、術中骨折発生率はカラー付きHAステム群(3.49%)の方がテーパーウェッジ型ステム(2.00%)よりやや高いことが明らかとなりました。

 

■今後の展望

 本研究により、カラー付きHAステムの使用は、THA後早期のPOPFF発生率がテーパーウェッジ型ステムよりも有意に低いことが明らかとなりました。これにより、ステム形状や固定様式の工夫が、患者予後改善につながるなど、臨床現場におけるインプラント選択・術式工夫にも応用が期待されます。

 今後は、高リスク患者への適応、術中骨折予防策の強化、さらに本設計のステムの長期成績や他術式との比較検討を進めることで、より安全で有効な人工股関節手術の確立につながることが期待されます。

 

■用語解説

注1) 人工股関節全置換術(THA):傷んだ股関節を人工の関節に置き換える手術。

注2) ハイドロキシアパタイト(HA):骨とよくなじむ特性のある、骨の主成分と同様の素材。

注3) 変形性股関節症:股関節の変形性関節症。歩行障害や痛みの原因となりやすい。

 

■論文情報

タイトル:Collared fully hydroxyapatite-coated femoral components reduce early periprosthetic femoral fractures in total hip arthroplasty with the direct anterior approach : a matched cohort study

著者:Rui Hirasawa, Kazuhiro Oinuma, Shigeo Hagiwara, Takamitsu Sato, Yuya Kawarai, Yoko Miura, Junichi Nakamura, Seiji Ohtori

雑誌名:The Bone & Joint Journal

DOI:10.1302/0301-620X.107B10.BJJ-2024-1494.R1


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