News Release

イエイヌの多様で特徴的な形態は1万年以上前に初めて出現した

Summary author: Walter Beckwith

Peer-Reviewed Publication

American Association for the Advancement of Science (AAAS)

イヌが身体的に多様であるのは、過去200年間に集中的な品種改良が行われた結果であると考えられがちだが、5万年にわたるイヌ科動物の頭蓋骨進化をたどった新しい研究では、人間が現代犬種をつくり始める何千年も前に、イエイヌは特徴的な形態を進化させていたことが示唆された。当時のイヌは、初期人類の影響、環境の変化、および食料源の変動によって形作られた。イエイヌの起源と初期の多様化は、考古学において最も論争の多いテーマの一つである。これまでの研究により、イヌは後期更新世に初めて出現し、少なくとも今から1万1000年前までには主要な遺伝系統が出現していたことが示されている。人間との長い関わりの結果として、現代のイヌは体の大きさも形も非常に多様である。こうした多様性の大部分は、過去数世紀にわたって行われた集中的な品種改良の直接的な結果であると考えられている。しかし、犬種間の明確な差異が現れ始めた正確な時期については不明な点が多く、更新世の標本が希少であることや、入手できる遺骸が断片的であること、骨格形態のみで初期のイヌとオオカミを区別することが難しいことなどの制限がある。

 

イエイヌの身体的形態がどのように現れて徐々に多様化していったかを突き止めるため、Allowen Evinらは、最先端の3D形態計測解析を行って、過去5万年にわたる643個のイヌ科動物の頭蓋骨を調べ、頭蓋骨の形および大きさの微細な差異を極めて精密に測定した。Evinらはレーザースキャニングやフォトグラメトリによってデジタル3Dモデルを作成することにより、古代のイヌ、現代のイヌ、それらの野生近縁種について、頭蓋骨における特定の特徴を比較した。その結果、イヌ特有の頭蓋骨の特徴は完新世初期に初めて現れたことが示された。その証拠となったのが、ロシアで発見された1万800年前の遺骸である。特筆すべきは、調査した氷河時代のイヌ科動物の頭蓋骨がすべて、オオカミのものに非常によく似ていた点である。このことから、目に見える家畜化の特徴は1万1000年前になって初めて現れたが、家畜化の過程は更新世後期にすでに始まっていたことが示唆された。これは遺伝学的証拠とも一致する。既知で最古の中石器時代や新石器時代のイヌは、現代のイヌと同程度の大きさの頭蓋骨をもちながらも、概して小型で多様性も少なく、多くの現代犬種に見られるような誇張された特徴はなかった。それでも、その多様性は驚くべきものであり、完新世初期のイヌは形態の幅が現代のイヌのおよそ半分、そして更新世にいたオオカミの祖先のおよそ2倍であった。このことから、近代的な品種改良が行われる数千年前には、すでにイヌの形態に顕著な差異が生じていたことが示唆される。一部の現代犬種にオオカミ特有の特徴が保持されていることは、イヌが野生のオオカミの先祖から漸進的かつ複雑な進化を遂げたことを示している。また、Evinらは、古代のオオカミは現代のオオカミよりも頭蓋骨の形と大きさが多様であったことも見出した。関連するPerspectiveではMelanie Filliosが、「イヌの家畜化は、多くの人間がイヌと強い絆を結んでいるがゆえに注目を集めてきた」と述べている。「Evinらの研究は、家畜化が数千年にわたる人間と動物の歴史が絡み合う、複雑かつ多面的な生物学的および文化的プロセスであるということについて、理解を広げるのに貢献するものである」


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