News Release

原子レベルで設計された単原子プラットフォーム:次世代触媒への可能性

革新的構造の単原子プラットフォームにより気体分子の捕捉に成功。より高効率な触媒開発への第一歩

Peer-Reviewed Publication

Okinawa Institute of Science and Technology (OIST) Graduate University

単一原子プラットフォームを表したイラスト。

image: 開いた配位環境と低配位環境を備えた単一原子活性サイトを精密に設計することで、気体分子の結合力が高まり、触媒応用における反応性向上の可能性を示している。 view more 

Credit: Kinikar ほか, Nature Communications

触媒は、金属精錬から医薬品製造まで、現代社会の多くの産業プロセスを支えています。環境負荷を減らし、効率を高めるため、科学者たちは従来の均一系・不均一系触媒の枠を超え、単原子触媒という新しい領域に挑戦しています。しかし、触媒となる個々の金属原子を自在に扱うのはまだ難しいのが現状です。特に、極低温の環境以外では金属原子が集まってクラスターを形成してしまい、また、原子を任意の場所に精密に配置するのも非常に困難です。 

この課題に対し、イタリア国立研究評議会物質構造研究所(CNR-ISM)、沖縄科学技術大学院大学(OIST)、スイス連邦材料科学技術研究所(Empa)、ローマ・トル・ヴェルガータ大学(イタリア)の国際研究チームは、これらの限界を克服する革新的な手法を開発しました。原子分解能を有する走査型プローブ顕微鏡を用いた表面合成の技術を駆使し、金属原子を選択的に結合できる部位を周期的に持たせた一次元状のプラットフォームを世界に先駆けて作製しました。ポリマーを基本構造として、活性部位を調整できるような設計は今回が初めてであり、このプラットフォームはより効率的で持続可能な次世代触媒開発への道を開くと期待されます。 

「触媒効率を最大限に高めるには、反応物が触媒となる一つ一つの原子にアクセスできることが重要です。しかし、従来の触媒のようなバルク材料やクラスターでは原子が内部に隠れており、それは不可能です。一方、自然界はこれにうまく対処しており、酵素は単金属原子や微小なクラスターを特定の分子環境に配置することで、驚異的な効率と選択性を発揮します」と、筆頭著者であるMarco Di Giovannantonio博士(CNR-ISM ONSET Labリーダー、OIST客員研究員)は説明します。「本手法は、ポリマー鎖上に均一な間隔で単一の金属原子を配置し、室温以上でも驚くべき安定性を実現することで、酵素に近い触媒への新たな道を開くものです。この設計はさまざまな金属や配位子構造にも適応可能で、触媒分野に新たな可能性をもたらすと期待します。」 

理論研究により、この単原子プラットフォームが、他の研究対象となっている構造と比較して、一酸化炭素(CO)、酸素(O₂)、水素(H₂)などの気体分子をより強く結合することが明らかになりました。この結果は、二酸化炭素(CO₂)を有用な製品へ変換する反応など、中間体の選択的安定化が求められる産業上重要な触媒反応の理解を深める上で、このようなプラットフォームが有望であることを示唆しています。

「本研究は、原子レベルで正確な構造を有する単原子触媒を構築する新たな戦略を提示するだけでなく、将来的にさまざまな応用展開が期待できるような有機金属ナノ材料開発の基盤を築くものです」と、OIST有機・炭素ナノ材料ユニットを率いる成田明光准教授は述べています。 

本研究は、PRIN 2022(ATYPICAL)、OIST、日本学術振興会(JSPS)とCNRの二国間交流事業、ならびにCNRのStort Term Mobility助成金(2件)の支援を受けて実施されました。 

 


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