News Release

古代ゲノムを使わず、「TRACE」で現生人類が持つ古代ホミニンの祖先を追跡

Summary author: Walter Beckwith

Peer-Reviewed Publication

American Association for the Advancement of Science (AAAS)

古代参照ゲノム配列を必要とせずに現生人類が持つ古代ホミニンの祖先を検出できる新しい計算論的アプローチにより、現生人類の進化の図は想像していた以上に複雑であったことが明らかになった。研究者らはこのアプローチを利用して、全ての現生人類の祖先が、アフリカから拡散する前に未知の「ゴースト」集団のDNAを受け継いだと報告している。現在までに、ネアンデルタール人とデニソワ人のゲノム配列決定から、現生人類と古代ホミニンの交雑によって現在のゲノムが形成されたことが示されている。現生人類はまた、いまだ確認されていない他の古代人類グループ、いわゆる「ゴースト」集団とも交雑したと考えられている。更に、現存する人々とデニソワ人のゲノムから得たエビデンスでは、約100万年以上前に人類系統樹から分岐したもっと古い「超古代」系統の存在も指摘されている。しかし、古代DNAサンプル、特にさらに古い集団や様々な地理的地域の集団から得た古代サンプルが不足していることと、既存の方法が参照ゲノムに依存していることから、古代の遺伝子移入の歴史を完全に再構築するには限界がある。

 

Yulin Zhangらは今回、祖先組換えグラフ(ARG) - 組換えと共通祖先を通してゲノムがどう進化してきたかを示す詳細図 - を再構築することで、古代の交雑の遺伝的特徴を検出するTRACEと呼ばれる新しい計算論的アプローチを開発した。これまでの方法とは異なり、TRACEは古代参照ゲノムも未混血の外群集団のデータも不要で、現存する人々のゲノムのみを用いて今まで知られていなかった古代の寄与を特定することができる。Zhangらは、シミュレーションでこのアプローチを検証し、1000ゲノムデータセットなどの世界の人類集団の高カバレッジゲノムにそれを適用した。TRACEによって、既知のネアンデルタール人とデニソワ人の祖先を復元することに成功し、同時に、古代人類集団とのこれまで知られていなかった交雑も明らかになった。今回の発見は、これまで考えられていたようなアフリカの特定の人類集団に限らず、全ての現生人類の祖先が出アフリカ前に未知の「ゴースト」集団からDNAを受け継いだことを示唆している。驚くことに、このゴースト集団祖先はネアンデルタール人とデニソワ人のDNAを排除したと考えられているゲノム領域でも発見され、このことは、そういった領域は全ての古代祖先ではなく、ネアンデルタール人とデニソワ人を特異的に淘汰したと考えられることを示唆している。TRACEによってはまた、オセアニア人がデニソワ人を間接的に介して、さらに古い祖先の「超古代」人類系列の痕跡を受け継いだことを示すエビデンスも発見され、現生人類の遺伝的遺産が現在は絶滅した人類集団との相次ぐ多数の交雑によって形成されたことが明らかになった。

 

研究インテグリティの問題にご興味のある記者の方へ:本研究の共著者であるPriya Moorjaniは次のように述べています。「ゲノムデータセットの規模と複雑性が増すに連れ、透明性、再現性、及びオープンな方法がこれまで以上に重要になってきます。データ、ソフトウェア、ベンチマーキングの枠組みを共有するための継続的な取組みと、独立した複数のデータセットにわたる慎重な検証は、新たな発見の頑健性と再現性の保証に役立ちます。」


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