image: Overview of the novel cell-free DNA (cfDNA) analysis method for detecting breast cancer recurrence. 1) Method Development: Researchers analyzed 150 blood samples (105 primary and 45 recurrent/metastatic breast cancer) focusing on nucleosome structures and fragmentation patterns across 26 gene regions associated with treatment resistance. 2) High-Accuracy Identification: By analyzing nucleosome occupancy in specific target regions (RERE and SYNPO2), the team successfully distinguished primary from recurrent breast cancer with an AUC of 0.826, further enhanced by machine learning models. 3)Clinical Potential: This low-cost, minimally invasive liquid biopsy approach paves the way for early recurrence surveillance, treatment-response assessment, and more personalized clinical decisions.
Credit: Sugiko Watanabe (Kumamoto University)
[背景]
高齢化が進む日本では、がん患者数の増加に伴い、より効果的な予防法や新しい治療法の開発が重要な課題となっています。中でも乳がんは、日本人女性で最も多いがんの一つであり、女性が罹患するがん全体の約20%を占めています。
乳がんでは、がん細胞の特徴に応じた「分子サブタイプ分類」に基づく治療が進んでおり、ホルモン受容体やHER2(がん細胞の増えやすさに関係するタンパク質)などの情報をもとに個別化治療が行われています。しかし治療が効きにくい(=治療抵抗性)症例や、治療開始後に耐性を獲得して再発する症例、さらには治療終了後5~10年以上経って再発する「晩期再発」が臨床上の大きな問題となっています。実際ホルモン受容体陽性乳がんの約10~26%でホルモン療法抵抗性がみられることが報告されており、その克服が重要な課題です。
近年、治療抵抗性の背景には、ESR1遺伝子の異常やPIK3CA遺伝子変異など、治療中にがん細胞が遺伝学的に変化する「ゲノム進化」が関与することが明らかになってきました。また、転写因子やクロマチン構造の変化も関与すると考えられていますが、その詳細な仕組みは十分に解明されていません。このため、乳がん再発や治療抵抗性を早期に捉え、その分子メカニズムを理解するための新たな解析技術の開発が求められています。
[研究の内容(方法)]
研究グループはこれまでに、乳がんがホルモン療法への耐性を獲得する過程で、転写状態が大きく変化する26の遺伝子領域を同定していました。これらの領域には、ERBB2、ESR1、RERE、SYNPO2など、乳がんの増殖や治療反応性に関与する遺伝子が含まれています。しかし、これらの領域がどのように治療耐性や再発に関与するのかは明らかになっていませんでした。
そこで本研究では、「治療によるゲノムストレスによって、これら26遺伝子領域に異常が蓄積し、その変化が血液中のcfDNAに反映されるのではないか」という仮説を立て、乳がん患者150症例(原発乳がん105例、再発乳がん45例)の血液由来cfDNAを解析しました。
解析には、26遺伝子領域を対象とした独自設計の高感度ターゲットシーケンス法を用いました。さらに、遺伝子変異、コピー数異常、DNA断片長、構造異常、ヌクレオソーム構造など、多層的なゲノム・エピゲノム解析を実施しました。また、得られた複数のcfDNA情報を機械学習で統合し、乳がん再発を予測するモデルの構築も行いました。
本研究により、乳がんのホルモン応答性と治療耐性化を切り替える分子メカニズムを、血液中cfDNAから非侵襲的に捉えることを目指しました。
[成果]
解析の結果、再発乳がんでは、原発乳がんと比較して、cfDNA中の遺伝子のコーディング領域だけでなく非コーディング領域を含めた変異数が増加し、DNA断片長が短縮していることが明らかになりました。また、ERBB2など一部の遺伝子領域ではコピー数増加を伴う特徴的な断片化パターンが認められ、治療耐性に伴うゲノム不安定性の存在が示唆されました。
さらに、cfDNAのヌクレオソーム構造解析により、REREおよびSYNPO2領域におけるヌクレオソーム占有率が再発症例で特徴的に変化していることを発見しました。この情報から算出したスコアは、原発乳がんと再発乳がんを高精度に識別し、ROC解析ではAUC 0.826という高い診断性能を示しました。
加えて、ヌクレオソームスコア、コピー数異常、変異数など複数の指標を統合した機械学習モデルの構築により、高精度に再発を予測できることを確認しました。
[展開]
本研究は、転写変化に基づく標的cfDNA解析とヌクレオソーム解析を組み合わせることで、乳がん再発やホルモン療法耐性を高感度に検出できる可能性を示した世界初の臨床的検証研究です。将来的には、低侵襲なリキッドバイオプシー(血液中のDNAなどを調べることでがんの状態を評価する検査)として、再発監視や治療効果予測、個別化医療への応用が期待されます。
一方で、本研究は症例数が限られており、原発群と再発群の間で分子サブタイプの偏りや症例背景の非対照性が存在するため、今後はこれらを考慮した大規模かつ前向きに設計されたコホート研究による検証が必要です。これにより、異なる乳がん分子サブタイプ間での適用や予測精度の一般化について明らかとなり、臨床現場での実用化に向けた信頼性の高いエビデンスを構築につながることが期待されます。
Journal
Cancer Research Communications
Method of Research
Experimental study
Subject of Research
Human tissue samples
Article Title
Transcriptionally informed nucleosome profiling of circulating cell-free DNA predicts breast cancer recurrence
Article Publication Date
28-May-2026
COI Statement
The authors declare no conflicts of interest