News Release

妊娠後期の胎盤からヒト胎盤幹細胞を作製する新技術を開発

妊娠高血圧腎症の原因解明と治療法開発への応用に期待

Peer-Reviewed Publication

Kumamoto University

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Efficient generation of hTSCs from late gestation placentas has been challenging. In this study, we introduced factors that suppress cellular senescence together with the stemness-associated gene SALL4 into late gestation placental trophoblast cells. In addition, we transiently inhibited a group of genes that restrict cell proliferation. This combined approach enabled the efficient establishment of hTSCs from late gestation placentas.

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Credit: Hiroaki Okae (Kumamoto University)

胎盤は、胎児へ酸素や栄養を供給する重要な臓器です。その主要構成細胞である栄養膜細胞は、胎盤の形成や機能に重要な役割を果たしています。栄養膜細胞の異常は、流産、胎児発育不全、早産、妊娠高血圧腎症など多くの妊娠合併症に関与すると考えられています。しかし、適切な研究モデルが不足していたため、これらの疾患が発症する仕組みは十分には理解されていません。

 

研究グループは2018年に、着床前胚および妊娠初期の胎盤から、ヒトTS細胞を作製する技術を世界に先駆けて報告しました(Cell Stem Cell 2018)。ヒトTS細胞は、高い増殖能に加え、全ての栄養膜細胞へと分化する能力を持つため、ヒト胎盤の発生や分化を研究するための優れたモデルとなります。しかし、妊娠後期の胎盤から効率よくTS細胞を作製することは困難であったため、妊娠合併症研究への応用が大きく制限されていました。本研究では、妊娠後期の胎盤の細胞が、老化の特徴を示すことに着目しました。そこで、細胞老化を抑える因子と、幹細胞性を維持する遺伝子「SALL4」を導入し、さらに細胞増殖を抑制する遺伝子群の働きを一時的に抑えることで、正常な染色体を保ったTS細胞を効率よく作製することに成功しました。このTS細胞は、妊娠初期の胎盤より作製したTS細胞と同等の増殖能と分化能を保持していました。

 

この方法を用いて、妊娠高血圧腎症患者10例の胎盤からTS細胞を樹立しました。患者由来TS細胞を解析した結果、栄養膜細胞の浸潤能(母体に入り込む能力)が低下していることが分かりました。この観察結果は、妊娠高血圧腎症患者において栄養膜細胞が母体血管へと十分に侵入できない、という特徴と一致していました。また、胎盤から分泌される血管形成因子PGF(Placental Growth Factor)の分泌低下も確認され、実際の患者で見られる異常を一部再現することに成功しました。

 

妊娠高血圧腎症は、妊婦の高血圧や臓器障害を引き起こす重篤な疾患であり、母児双方の生命予後に関わることが知られています。しかし、現在でも、発症機構については不明な点が多く残されており、根本的な治療法は限られています。本研究で開発されたTS細胞の培養技術は、妊娠高血圧腎症をはじめとする妊娠合併症の原因解明や新規治療法の開発に役立つと期待されます。


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