News Release

高い氷崖は急速に崩落するが、それだけで氷河の急激な後退を引き起こすとは限らない

Summary author: Walter Beckwith

Peer-Reviewed Publication

American Association for the Advancement of Science (AAAS)

新たな観測によって、高い氷崖がこれまで考えられていたよりも速く崩落する可能性はあるが、南極の氷の減少に関する一部の予測で懸念されているような、急激な後退を引き起こす可能性は低いことが示唆された。氷床の氷は氷河や氷流によって海に運ばれ、最終的には海に張り出す棚氷や切り立った氷崖となる。海に張り出す棚氷が消失し、氷床が内陸に後退した場合、こうしてできた高い崖は不安定になり、崩壊する可能性があると指摘されている。この現象は「海氷崖不安定性(MICI)」として知られており、相次ぐ崩壊によって露出する高い氷崖が増えると、氷床の壊滅的な後退につながる可能性がある。しかし、MICIはこれまで直接観測されたことがないため、将来の氷の減少や海面上昇に及ぼす影響は依然として不明である。こうしたデータ不足に対処するため、Caroline Needellらは、2003~2023年の間に収集された航空機および人工衛星によるレーザー高度計の測定値を組み合わせ、南極大陸とグリーンランドの縁沿いにある氷崖の位置と高さを地図化した。

 

その結果、Needellらは、非常に高い氷崖はまれであることを見出した。南極大陸では、観測された氷崖のうち52.2メートルを超えるものはわずか5%であり、グリーンランドでは、76.6メートルを超えるものはわずか5%であった。どちらの地域においても、不安定になる閾値として以前提示された、約100メートルの高さに迫る氷崖はほとんどなかった。著者らによると、これら2つの氷床には大きな違いがあるにもかかわらず、氷崖の平均高さと最大高さは非常に似通っていた。また、最も高い氷崖は、氷河が海に向かって急速に流れている地域に集中していたという。今回の研究結果によって、氷崖の高さと最も強く関連しているのは、水深、氷河前面にあるアイス・メランジュの厚さ、および氷河末端付近のクレバスの量であることが示された。氷崖がMICIを引き起こしうる高さに迫ったときにどのように振る舞うかを検証するため、Needellらは高さ90メートルを超える氷崖をもつ16の氷河に注目した。そして、研究期間中に詳細な反復観測が行われ、かつ測定可能な後退が見られた氷河を4つ確認した。彼らは、これらの高い氷崖が、これまで考えられていたよりも急速に崩落する傾向があることを見出した。しかし、急激に後退する可能性は、内陸部における氷厚の勾配に大きく依存する。氷厚の変化が緩やかであると、不安定な状態が続くのに必要な氷の蓄積が制限されると考えられる。Needellらは、これらの研究結果を南極西部の脆弱なスウェイツ氷河に当てはめ、棚氷の崩壊によって現在の接地線に高い氷崖が露出しても、MICIに起因する後退が直ちに起こる可能性は低いであろうと主張している。


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