image: 本研究で開発されたMatterGen-e⁻の概要。結晶構造と局所電子情報を同時に生成することで、目標物性を満 たす安定・新規な構造の生成率が向上する。 view more
Credit: 東京大学 生産技術研究所
東京大学 大学院工学系研究科マテリアル工学専攻の奥田 伊武来 大学院生、同高原 泉 大 学院生、同大学 生産技術研究所の溝口 照康 教授の研究グループは、結晶構造と「局所電子情 報」を同時に生成する拡散モデルMatterGen-e−を開発し、狙った性質をもつ新物質を設 計する「逆設計(インバースデザイン)」の成功率を大きく向上させることに成功しま した。
近年、結晶構造を自動で生成する AI が急速に発展しています。とりわけ 2025 年 1 月に米 Microsoft Research が発表した「MatterGen」は、無機結晶の生成に特化した拡散モデ ルであり、安定で多様な新規物質を高い確率で生成できることを示して大きな注目を集めまし た。一方で、こうしたモデルに「バンドギャップが3 eVの材料」のように性質を指定 して生成させると、条件は満たすものの、不安定だったり化学的にありえなかったりする構造 が増えてしまうという問題が残されていました。本研究グループは、この問題の根本には「AI が原子の種類と並び方しか見ていない」ことがあると考えました。材料の性質を決めているの は、原子の周囲でどのように電子が配分され、どのようなエネルギー分布をもっているかとい う電子の状態だからです。
そこで本研究では、このMatterGenを基盤として、原子の位置や種類といった構造情報に加 えて、各原子がもつ電荷(Bader電荷)や、各原子まわりの電子のエネルギー分布(原 子分解電子状態密度(原子分解DOS))を、構造と「同時に」生成するようAIを拡張し ました。その結果、MatterGenと同じ枠組みのまま、生成される構造の新規性・安定性・妥当性 がいずれも向上し、検討した中で最も条件の厳しい設定では狙いどおりの物質が得られる割合 が約4倍になりました。さらに、生成された電子情報自体も第一原理計算の結果とよ く一致しており、追加の計算なしに電子状態の情報が同時に手に入るという副次的な利点も得 られました。
本成果は、生成AIに「何を学ばせ、何を出力させるか」という設計思想そのものに一つの指 針を与えるものであり、新材料探索の加速に貢献することが期待されます。本研究成果は、2026 年10月15日付でnpj Computational Materials にオンライン掲載されます。
Journal
npj Computational Materials
Article Title
Inverse Materials Design via Joint Generation of Crystal Structures and Local Electronic Descriptors
Article Publication Date
15-Oct-2026